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株式会社 東急エージェンシープロミックス


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インタビュイー
能登 健裕氏
株式会社東急エージェンシープロミックス
取締役 クリエイティブセンター長 エグゼクティブ クリエイティブ ディレクター
1993年に東急エージェンシー入社。クリエイティブ局長、スタッフ副本部長を歴任し、2017年より現職。JAAAクリエイティブ委員会委員長を務める。

高田 伸敏氏
株式会社東急エージェンシー
エクスペリエンスクリエイションセンター 第1統合ソリューション局 局長 
エグゼクティブ クリエイティブ ディレクター
1995年東急エージェンシー入社。クリエイティブ局長を経て、2021年より現職。ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS ME部門審査委員(2018~2021年)。

感情を動かす統合型コミュニケーションを目指して

イベントやグラフィック、映像といった幅広い領域の機能を有する総合制作プロダクションとして2010年に設立された株式会社 東急エージェンシープロミックス。昨年オフィスを移転して新たな一歩を踏み出した同社の取り組みや映像の持つ可能性などについて、能登健裕氏と株式会社 東急エージェンシーの高田伸敏氏にお話をうかがった。(収録:2022年3月14日)
【 CM INDEX 2022年4月号に掲載された記事をご紹介します。】


同一フレームを続けることで「好き」という感情とブランドをひも付ける

— 直近の代表的なCMについてお聞かせください
能登:東急グループの仕事は長期間にわたって手掛けているものがあり、その中でも山口智充さん起用の東急リバブルさんのシリーズCM※1は8年近く続く人気シリーズです。広告の役割はブランドやサービスを覚えてもらうだけではなく、生活者が選択する上で「好き」というポジティブな感情とブランドをひも付けることが重要なポイントになってきます。このシリーズは純粋想起されにくかったという課題をクリアするとともに、好感の醸成への寄与という点でも評価されています。
高田:フレームのあるCMは長く継続しているものほど、視聴者が見た瞬間にCMの世界に入れますし、メッセージも伝わりやすい。お客さまも時代も新しいものを求める傾向にありますが、鮮度を保ちつつ同一のフレームを続けることは非常に効率の良い効果的な手法だといえます。

※1 東急リバブル/仲介売買事業ブランドCM
「トリビア2021」篇

トリビアを披露する父親役の山口智充と子どもたちのリアクションを通して東急リバブルのメリットを訴求する人気シリーズ。昨年10月度、今年3月度に住宅・建設業類のCM好感度1位に輝いた

テレビCMをコミュニケーションの真ん中に
マスメディアをトリガーに拡散の流れを作る

能登:EXITさんが出演したエースコックさんの『スーパーカップ』のCM※2も話題となりました。1999年にロンドンブーツ1号2号さんを起用した企画のリメイク版で、商品名を連呼するというシンプルな構造だからこそ、ターゲットである若年層には記憶に残りやすく、親世代にとっては懐かしく感じられます。テレビCMは若者世代に届くのかという話を耳にしますが、こちらのCMのようにコンテンツに力がある場合は自動発生的に拡散の回路が作られ、ティーンの間に広がっていきます。例えばリビングでこのCMを見た親が「懐かしい」と話し、親の反応に興味を示したティーンがCMについて検索し、友達に知らせたくなる。こうした人に言いたくなる仕掛けが施されたCMは世代を問わず波及効果が高いのではないでしょうか。
高田:マスメディアをトリガーにSNSヘ拡散する流れは重要で、新聞記事といったメディアからの情報にとどまらず、それを元に交わされる意見やコメントが記事化されるなど、情報の波及効果は高まっているように思います。
能登:このケースでは商品を購入する親世代、食べる若者世代の双方が楽しめる点もポイントでした。一方、情報の拡散はネット上だけではなく、リビングや学校でも起こるため、例えばタッチポイントごとにコンテンツの最適化を図るあまりブランドの人格がバラバラになり、結果としてブランド価値が積み上がらない場合もある。ひとつの人格でコミュニケーションを設計するのであれば、認知を高めやすく拡散のトリガーとして機能するテレビCMを真ん中に置くことは合理的な選択ではないでしょうか。

※2 エースコック/スーパーカップ「ブタキムEXIT」篇
コンビニのレジに立った兼近大樹の「ブタキム! ブタキム!」というコールにりんたろー。や大勢の客がレスポンスをする内容。若年層を中心に支持され、昨年3月度にCM好感度新作トップ10入りを果たした

— 広告を制作する上で大切にされていること
能登:制作プロセスの中で発生しうるさまざまな課題をクリアし、「好き」という感情を伴って視聴者に受け止められるアウトプットに仕上げることが制作会社としての大切な機能だと思っています。
高田:クライアントからの依頼も「CMを作ってほしい」ではなく「課題を解決してほしい」に変わっているため、戦略やコアアイデアを元に統合的にコミュニケーションを設計しますが、最終的にメディアに発信されるコンテンツにクオリティーが備わっていなければ生活者には届きません。プロダクションと密に連携し、ゴールイメージの共有を図ることがこれまで以上に重要になってきています。
能登:「プロミックス」という社名には映像やグラフィック、プロモーションなど、プロとしての専門性を生かし、それらを融合して統合サービスを提供するという思いが込められています。各分野のプロフェッショナルがそろっておりますので、アウトプットから逆算して効果の高いコンテンツを生み出すための体制が整っていると自負しています。
— 昨年、東急エージェンシーとともに本社を移転されました。今後の取り組みについてお聞かせください
高田:東急エージェンシーに立ち上げた統合ソリューション局は、ひとつのチームの中にクリエイティブ、デジタル、アクティベーションなどが含まれたセクションです。従来は戦略、企画立案から実行といった流れでそれぞれの担務に向き合うケースが多かったのですが、現在はオリエンの解釈といったスタートラインからともに動くことになるため、ブレがなくなり、初期のタイミングからアイデアを提案できるといったメリットが生まれています。
能登:東急エージェンシーが統合型の事業を推進しておりますので、東急エージェンシープロミックスもそれぞれの専門家をチームとして有機的に結合させることで統合的なオーダーに対応してまいります。例えば、以前はセクションごとに固定していた座席を完全にフリーアドレスとし、プロジェクトを一緒に進めている社員同士が集まり、新たなコミュニケーションやアイデアが生まれやすい環境作りを図っています。

本能に語りかける広告でブランドとユーザーの絆を作り変える

能登:今後も広告の手法やメディアは進化しますが、大脳生理学的にいえば、人間は情緒、つまり左脳ではなく本能でしか行動しません。本能に語りかけることで生活者の好意、行動につなげることこそが、ブランドを長続きさせるポイントであることは変わらない。「必要な人に必要なタイミングで情報を届ければ行動を促せる」といった、ある種の合理性だけで作られた広告からロイヤリティーは生まれず、そこで獲得したお客さまが同様の広告を展開したブランドにスイッチすることも起こりうるため、別の視点でブランドとお客さまの絆を作り変える必要があると感じています。そこで力を発揮するのが映像です。近年では自社の社員へのミッションの浸透を目的とした映像をオーダーされる企業が増えており、当社でもとある上場企業のインナー向け映像を制作したことがあります。その際にクライアントの社長が「社員に繰り返し伝えても手応えがなかったが、映像を見る社員の顔から伝わっていることが分かった」とおっしゃってくださいました。映像は右脳に深く入り、自分ごと化させる力があるんですよね。これからも映像の力を活用し、メッセージの効果を最大化する広告制作ができればと考えています。