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株式会社 パズル


インタビュイー
代表取締役 プロデューサー
岡田 行正氏 
広島生まれ、東京・茨城育ち。1992年TV−CM制作会社入社。映像制作とウェブ制作のプロデューサーを経て、2006年株式会社パズル設立。時代の変化に寄り添い完成形のないプロダクションとして、映像・ウェブサイト・グラフィック・イベントほか、広告の企画・制作・運営を行う。国内外の広告賞で受賞多数。

メディアの多様化に対応するクリエイティブ力

映像制作と合わせ高い技術力を駆使したさまざまなウェブコンテンツを世に送り出しているパズル。2006年の設立当初からCMとウェブの境界線をなくし、ひと続きの体験としてプロモーションを構築するプロダクションである同社は、メディア環境の変化に柔軟に対応し続けてきた。現在の取り組みや今後の展望について、代表取締役の岡田行正氏にお話をうかがった。(取材:2023年9月11日)
【 CM INDEX 2023年10月号に掲載された記事をご紹介します。】


新興のウェブ制作にCMのノウハウを
両面を担うプロダクションとして誕生

— 貴社の設立の経緯、強みについてお聞かせください
 2006年にパズルを立ち上げたのですが、それ以前に私は太陽企画でCM制作に携わっていました。2000年代の前半は「続きはウェブで」とウェブへ誘導する検索窓を入れたCMが数多く作られた時期で、CMとウェブを同じチームで担当するという当時としては新しい手法で制作に取り組んでいました。
 最も予算が多いCMと、最も予算の少ないウェブを同時に制作することにより、アウトプットの質も高まり、ウェブのチームのスキルアップにもつながる。当時ウェブは新興だったこともあり、現場に大きな負担がかかるなど制作手順に未熟な部分もあったのですが、CM制作の手法を活用することで改善されていきました。映像とウェブの両面を担うこうしたプロダクションがあるべきだと考えたことが、パズルの設立につながっています。
— 設立当時と比べて広告制作に変化を感じますか
 今はテレビを見ながらスマホで検索するのが当たり前ですが、おそらく「続きはウェブで」の頃もテレビと同じ部屋にあるパソコンで検索していたでしょうから、ひと続きの体験であることに変わりはありません。広告としてひと続きの体験をいかにスムーズにしてもらうか、プロモーションしているものに対して好意的なアクションを起こしてもらうかが大切で、受け手にとっては誰が作ったかは関係ありませんから、作り手としてもCMとウェブに境界線を引かないことが今も変わらず重要です。
 制作現場でいうと、広告制作は専門的に分業されており、横断的に混ざり合うといった変化はありませんでしたが、デジタル技術の発達によって作り方は大きく変わりました。例えばデジタル一眼カメラはハイエンドのモデルではなく、ミドルエンドの機器を使ってプロが仕事をするようになり、そういう意味では参入障壁が下がっています。中高生でさえ自ら情報発信できる時代ですので、作り方やスピード感といった縦軸で大きな変化が起きていると感じます。

生成AIなど最新技術を取り入れた
領域を横断するコンテンツ作り

— 直近のクリエイティブワークについて
 ハーゲンダッツ・ジャパンさんのプロモーションとして、8月10日の「ハーゲンダッツの日」を記念したオンライン、オフラインの音楽ライブ『とろけライブ』を手掛けました。パズルは主にウェブサイトなどのオンラインを担当し、オンラインでも楽しめるコンテンツの企画から携わっています。イベントは当日1日のみですが、告知やお客さまからの登録といった事前、キャンペーンなどの事後まで、時間軸のある体験をお客さまに提供したことで、ブランドのエンゲージメントを高める一助になったのではないでしょうか。
 コロナの影響で配信イベントが普及し、音楽業界ではこれまで以上の集客ができるようになったアーティストがいたり、リクルーティングでも多くの学生に会社説明会に参加してもらえるようになったりしています。プロモーションも同様で、オンラインという選択肢が加わったことで、手法の幅が広がったと感じています。
 NTTドコモさんのAndroidのプロモーション『声から選ぶスマホ店』では、ウェブサイトと『シンデレラ』をモチーフとした映像コンテンツをひとりのディレクターが中心となって制作を進めました。こうした領域を横断した取り組みはパズルの得意とするところです。
 Dentsu Lab Tokyoさんと手掛けた日本マクドナルドさんの『AIバーガージェネレーター』も好評をいただいたウェブ施策のひとつです。AI画像生成技術を使ったもので、好きな食材や料理名を入力するとオリジナルのバーガー画像が表示されます。Adobe Flashが全盛の頃にはこうしたコンテンツは多数ありましたが、AIという新しい技術をうまく活用できた事例といえます。

ハーゲンダッツ・ジャパン「とろけライブ」
[Alexandros]の川上洋平、家入レオ、aoが出演した音楽ライブ。開催時間になると特設サイトがライブ仕様に変化するなど、オンライン視聴者も会場と一体で楽しめる仕掛けが施された
— ウェブサイトでは広告をコンテンツと表現していますが、背景にある思いとは。また今後の取り組みについて
 最近は意識的に“広告”という言葉を使わないようにしています。パズルが作っているものは広告ですが、コンサルティング会社が広告に参入するなど、他業界との境界線が薄れています。そこで求められるのはクリエイティブの発想力や企画力、そして制作力です。広告はクリエイティブの中でも質が高く、そうした環境下でパズルも期待に応え続けてきたという自負がありますので、ここで培ったクリエイティブ力を広告に限定せず、エンターテインメントなど幅広い領域まで広げたいですね。

0から1、1から100までの流れを生み出す
クオリティー向上のため人材育成に注力

 パズルは設立当初から映像やウェブなど領域を横断して“何でもできる”ことが強みである一方、何ができるかが分かりにくいというジレンマもあります。ですが、クリエイティブの力を求められている今の時代に、クリエイティブの力を発揮できること、これがパズルらしさです。スマホもない時代から私は「これから街中、映像だらけになるぞ」と社員に言っていたんですね。今、あらゆる場所にサイネージが設置されていますし、今後映像を表現する場が増えるとともに、それぞれの用途に応じた映像表現がますます求められるはずです。そのときに企画を立て、体験をデザインし、実行するパズルの懐の深いクリエイティブ力を発揮していきたい。
 その実現に重要なのが人材です。ウェブ制作の体制が未成熟だった頃から人材育成に課題を感じていたため、仕事を身に付けるための補助ツールとしてパズル独自に“PMノート”を2011年から作成し、内容を毎年更新しています。これを社員だけでなく関わるスタッフへも配布し、全員で仕事のクオリティー向上を目指しています。
 優れた人材を育成し、0から1、1から100という一連の流れを生み出せるクリエイター集団として、新しいことの先頭で最高に面白いことをし続けたいと考えています。

パズルのPMノート
教科書とは異なり、先輩が後輩に仕事を教える体裁で仕事の取り組み方を指南することが特徴。仕事の基本を身に付けることができるため、PMに限らず、すべての職種へ向けた内容となっている