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株式会社キラメキ


インタビュイー
代表取締役社長 プロデューサー
石井 義樹氏 
国内外の監督、DOP、フォトグラファーなどを起用しテレビCF、web用映像、グラフィック広告を制作。ブランド広告映像、スキンヘアケア、ファッション広告映像のご依頼が多い。事業会社からの直案件も増加中。2024年Dubai Lynx Film Craftの審査員を務めた。

人と人の“スパーク”が生むクリエイティブ

海外のクリエイティブに精通し、アジアやヨーロッパを中心としたさまざまな職種のクリエイターのマネジメントも手掛けるキラメキ。世界各国での撮影や制作に対応でき、国内に限らず海外のクライアントの広告に数多く携わるなど、そのクオリティーが高く評価されている。同社の歩みや広告作りへの思い、今後の展望について代表取締役社長の石井義樹氏にお話をうかがった。(取材:2024年7月10日)
【 CM INDEX 2024年8月号に掲載された記事をご紹介します。】


より良いものを作ることをゴールに
世界中のネットワークから最良の選択肢を

— 貴社設立の経緯や強みについてお聞かせください
 キラメキは今年10月で20周年を迎えます。創業時、他社にない強みをと考えて社員のほとんどがバイリンガルで海外ともスムーズなコミュニケーションが取れるような会社を目指しました。というのも当時はテレビCMの監督は日本人から選ばれるのが当たり前で、一流といわれるひと握りの監督に仕事が集中し、彼らを押さえることがほとんどできない。かといって経験の浅い若手監督では不安だというクライアントも多いことから納得のいく人選が難しいと感じていました。僕はそこに海外の監督という選択肢を加えられないかと思ったんです。世界でトップレベルの監督をアサインするのは無理だとしても、日本の中で限られた選択肢から選ぶより、世界に目を向ければもっと可能性を感じられる人材は大勢いるはずです。「より良いものを作る」というゴールに対して最善のスタッフィングができれば、国籍は関係ないはずだと。それは監督だけでなくキャスティングやカメラマン、音楽制作会社、スタイリスト、ヘアメイク、どんな役割でも同じです。クオリティーを高めるための選択肢は多い方が良いですから、ニーズは必ずあると信じていました。現在は国内スタッフ20人のほか、欧米を中心とした世界中のクリエイターを40人ほどマネジメントしながら、プロダクションの枠にとどまらないネットワークを構築し、表現の可能性を広げています。
— 代表的なクリエイティブワークについて
 長年担当させていただいている旭化成さんの『ヘーベルハウス』では東日本大震災の翌年から展開した「考えよう。答はある。」シリーズが印象に残っています。社会の空気が一変して広告の在り方が見直される中、あらためて今まさに我々が直面している社会環境の変化や気候変動といった課題に、ハウスメーカーとしてどう向き合っているかを力強いコピーや実証映像を通してストレートに表現し、同年にACCゴールドを受賞しました。そのほか直近ではメンズ脱毛専門店『RINX』のテレビCMとグラフィック広告を制作しました。YOUさんを起用した本作はクリエイティブプランのみならず、メディアプラン、PRも担当させていただいています。海外のクライアントですと、イギリス発の映画ストリーミング会社・MUBIの初めてのブランドキャンペーンを手掛けました。MUBIはクリエイティブ出身のメンバーが多いこともあって衣装などの細部にも並々ならぬ思いがあり、撮影の直前まで意見を交わしながら進めていきました。考え方やアプローチは違っても、クライアントも我々も良いものを作りたいという思いは同じです。文化や言語の違いだけでなく業界の空気感も毎回異なるため、メンバーや環境に合わせた現場作りが大切だと感じています。
旭化成/ヘーベルハウス「白い箱」篇
「遠くに行けば、土地が広くなることは知っている。けれどもやはり、都市に住もうと思う」といった細野晴臣の語りとともに、都心の住宅地に建てられた白い箱を映し、「考えよう。答はある。」と締めくくった。


MUBI/ブランドキャンペーン「We Are What We Watch」
リトアニアを舞台に帰宅途中の女性やデスクに向かう男性など、さまざまな人とその人が見てきた映画を日常の景色に投影し、「映画を見ることで影響され、自身が形成されること」を表現した作品。
— 貴社が広告を制作される上で大切にされていること
 人と人とが出会うことで発する“スパーク”が「キラメキ」で、「この人とこの人をつなげたらどうなるだろう?」「このチームがこのクライアントの仕事をしたら絶対に面白くなる」といったアイデアを形にすることが僕らの仕事の醍醐味です。どんなに有名な監督を起用できてもその人が60%しか力を出せなければ、120%を発揮した若手にかなわないかもしれません。監督の個性に寄り添い限られた予算の中でどこまでできるか。その人の魅力を最大限に引き出すのがプロデューサーの力の見せどころなんです。課題や問題の一つひとつをどう解決して、より良い方向に進められるか。人と人の間に立って、プロデュースする人の情熱や想いがクリエイティブの質を大きく左右するのではないでしょうか。だからこそすべての制作過程において、クライアントや広告会社の方々だけでなく、あらゆるスタッフが気持ちよく仕事ができる現場作りが大切だと考えています。ですのでケータリングのひとつをとってもより良いものがないか、常に情報収集を欠かさないようにしています。
 こんなにもコミュニケーションを必要とする仕事はないのではと思うくらい、あらゆるレイヤーで意思疎通を円滑にすることが重要になります。世代や育った環境、文化の異なる外国人のスタッフとの仕事が多いからこそ、何を守って、どこにクリエイティビティーを発揮すべきかをより明確にする。その上で撮影、編集、それぞれの段階でプラス10点、20点と積み上げられるよう一人ひとりが考え続けていると、気付いたら100点を超えたものができることがあります。その瞬間がたまらないですね。海外のスタッフと仕事をしていると思いも寄らない視点やアイデアを発見することがあり、大いに刺激を受けています。

人と人との相乗効果を生み出し
クリエイティブの幅を広げていく

— 今後の展望をお聞かせください
 これまで以上に幅広い仕事に対応できるような体制に整えるべく、直近ではキャスティング会社をグループに加えました。会社の規模を拡大することで働く環境をより良くしたいという思いもあります。昨今の制作会社の人材不足は深刻で、人を育てるためにも働きやすい環境を作るためにも、キーマンとなるスタッフがある程度いなければ成し遂げることはできません。当社は女性が7割なので、たとえば育児などでライフステージが変わっても同じ仕事を続けられるようにしたいんですね。せっかく積み上げてきたキャリアですから、社内で活かしてもらえた方がお互いに良いですし、たとえ違う職種に挑戦するにしてもキラメキのグループ内で多様な選択肢を提示できたらと考えています。本業のほかにグループ内で副業ができたら収入だけでなく経験値も広げられる、そんな新しい働き方ができたら面白いかもしれません。
 そのほかにも長年プロデューサーとして活躍してきた方であれば定年後も自身のキャリアを活かしながら若手の教育にも力を注いでもらえるような体制を整えるなど、さまざまな場面で人と人の相乗効果を生み出しながら、もの作りをしていきたい。そして将来的には創業時からの夢である海外での本格的な拠点作りも実現させたいと思っています。