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株式会社ハット


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インタビュイー
小林 亜佐人氏 代表取締役社長 エグゼクティブプロデューサー
1974年生まれ、福島県出身。1997年4月に株式会社ハット入社。プロデューサー歴22年。2017年9月取締役、19年9月代表取締役副社長に就任し、21年9月より現職。幼稚園から始めた剣道で高校時代に国体で日本一になった実績を持つ。

チームワークが生み出す“FABULOUS”で高品位な広告

偉大なクリエイターから受け継ぐクリエイティビティと、良好な人間関係をベースとした強固なチームワークで“FABULOUS”なCMを世に送り出している株式会社ハット。広告を取り巻く環境が急速に変化する中で守り続けるハットならではの価値観や、未来に向けたさまざまな取り組みについて代表取締役社長の小林亜佐人氏にお話をうかがった。(収録:2022年5月24日)
【 CM INDEX 2022年7月号に掲載された記事をご紹介します。】


— ハットの歴史、強みについてお聞かせください
 前身のキャップを含めると創業56年、ハットになってから今年10月に30周年を迎えます。CMの黎明期に活躍した岩本力や私の入社当時の社長だった里見征武といった才能あふれるディレクターを擁するディレクターズ・カンパニーとして発足し、現在は立ち上げ時のクリエイティブのDNAを受け継いだディレクターと、新たな仕事を生み出すプロデューサーの両輪で事業を推進しています。Vコンを作るケースなど、ディレクターとプロデューサーが同じオフィスにいることで意思疎通の面でも実作業の面でもフットワークが軽くなりますので、社内にディレクターを抱えているという点は当社の強みといえるのではないでしょうか。
 社員同士の距離感が近く互いの存在を認め合う文化がハットの伝統としてあり、アイデアを出し合うといった協力関係が自然と生まれることに加え、相談しやすくサポートを得やすい環境であることは、若手にとって心理的な安全性にも作用していると考えています。現在のオフィスに引っ越してきてからはワンフロアになりましたので、これまで以上に風通しの良いコミュニケーションができていると感じます。フリーのスタッフの方からも「ハットはチームワークが良いよね」とほめていただくこともあるように、私自身も同期とのつながりや、先輩、後輩との関係が良好だったことがハットで長く働き続けられた要因のひとつだといえます。

オフィスはワンフロアで、社員同士の活発なコミュニケーションを生むためのさまざまな工夫が施されている。数多くのプロジェクトを社内のディレクターとプロデューサーをはじめとした制作部で進行するハットならではのチームワーク形成の原動力のひとつとなっている

“CREATIVITY”を社員の行動指針に
お客さまからの“ひとつ上の満足”を目指す

— コーポレートスローガン「FABULOUS CREATIVITY FIRST」に込められた思いとは
 大西(弘恭氏・現代表取締役 会長)が社長を務めていた数年前に、2025年にハットはどうあるべきかを考える『ハット2025』というプロジェクトを立ち上げました。私も含めランダムに選ばれた社員が新しい事業や映像制作の方法などについて幅広く議論し、役員に提案するという取り組みで、その中から生まれたのが「FABULOUS CREATIVITY FIRST」というスローガンです。お客さまに“及第点のひとつ上の満⾜”を感じてもらうよう努めること、それは社名のハットの由来でもある“HIGH−DEFINITION AD TEAM”、つまり高品位な広告を作ることにつながっています。
 さまざまな価値観がある中で、当社は“CREATIVITY”を社員の行動指針としています。スローガンとともに「そのCREATIVITYだけが、未来を変えることを信じて。」といったステートメントを記した名刺サイズのパンフレットを全社員に配布しており、迷ったときや壁に直面したときに、初心に返るきっかけになればと思っています。
 私はハットを率いるに当たり、「FAIR」「FLEXIBLE」「FRANK」「FUN」「FABULOUS」という「5つのF」を大切にしています。FABULOUSなアウトプットの実現に向け、変化に素早く対応するFLEXIBLE、お互いが正直に話し合えるFRANK、厳しい中にも楽しさを忘れないFUN、なかでも重視しているのがFAIRです。自分とは異なる部門で仕事をしている人や、別チームの出身者に対しては、どうしても距離ができてしまう。その逆もしかりで、近しい人に甘くなってしまうこともあります。そのようなミスマッチのないよう意識すると同時に、他者からも公平に映っているかを常に確認しています。
— カルピス®のCMを長く手掛けられています
 ハットでは、アーティスティックスイミングの小谷実可子さんが出演した1993年のCMから担当させていただいています。カルピス®※1というブランドが大切にしているメッセージ、シズル表現を軸として、監督のアサインをはじめとしたスタッフィングからブレることのないように仕事を進めています。水で割るコンクタイプのとろっとした液感やカルピスソーダ®の弾ける炭酸の映像をご覧になったり、カルピス®のCMで長く使われている「カラン」という氷が溶ける音を聞いたりすると、「カルピス®の夏が来た」と感じる方も多いのではないでしょうか。シズルに関しては本番撮影の前に広告主、広告会社の方の立ち会いの下でテスト撮影を実施して着地点を共有し、PPM、本番という流れになっています。かつては詳細に指示をいただくこともありましたが、現在は経験を積み重ねてきたことから多くの面で任せていただけるなど、これまで蓄積してきた信頼関係のもと、非常にスムーズなもの作りをさせていただいております。

※1 アサヒ飲料/カルピスソーダ®「のどがきもちいい」編
長澤まさみがグラスに注いだ商品を飲む姿や、絶叫しながらサーフィンをする様子を通して、炭酸の爽快感や甘ずっぱい味わいを訴求する内容。今年4月度のCM好感度 新作9位にランクインした

— 映像の可能性、今後の取り組みについて
 スローガン策定時に区切りとした2025年も目前ですが、情報伝達の方法やコロナ禍など、誰もが想像をしていなかった社会環境となりました。そうした中で社内での人と人のつながりにアレンジを加えたり、仕事のスタイルを変化させ、試行錯誤をしながらもハットらしさを失わずに対応してまいりました。そのハットらしさの根本には、良好な人間関係をベースとしたコミュニケーションがあります。円滑なコミュニケーションを実現することによって無駄なやりとりが減り、業務により一層集中できるようになり、結果として高品位なもの作りへつながるというサイクルを引き続き目指していきたいと考えています。
 私が入社した当時、映像撮影や編集はプロしか持ち得ないスキルでしたが、現在はスマホひとつで誰もが習得できるものとなりました。ただプロが緻密な計算の上で作った映像か、素人が短時間で作ったものかは見た瞬間に判断できてしまう。やはり心を動かすような質の高い映像を作り続けることにハットとして向き合い、広告主、広告会社の方がもちろん、映像をご覧になるすべての方にも満足していただけるように取り組んでまいります。
 また幅広い分野で映像が活用される時代になりましたので、受注の間口の拡大にも挑戦していきたいですね。コロナ禍の最中でしたが、当社の台湾人プロデューサーが台湾の仕事を受注したことがあります。現地で背景を撮影、台湾人のタレントさんを日本でリモート撮影、リモート編集といった新しい座組みで進めるプロジェクトとなりました。また私自身も数年前にひとつの企画を6カ国共通で展開する仕事の経験がありますし、アジアの方々に作品集を見ていただくと興味を示してくださるケースもあることから、これからは海外での仕事も視野に入れたいですね。今後については受注するのを待つだけでなく、プロデューサーがさまざまな方面にアンテナを張って情報を獲得しながら、こちら側から働きかけていく積極性を一人ひとり高めていきたいと考えています。