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株式会社 博報堂プロダクツ


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インタビュイー
武内 寛雄氏 執行役員 映像事業統括
1990年博報堂入社。コピーライター、クリエイティブディレクターを経て、2019年に博報堂プロダクツ着任

鍬形 治氏 執行役員 動画ビジネスデザイン室 室長
2001年博報堂フォトクリエイティブ(現・博報堂プロダクツ)入社。企画制作事業本部を経て、2020年動画ビジネスデザイン室設立

茂木 敦氏 執行役員 映像クリエイティブ事業本部 本部長
2002年博報堂フォトクリエイティブ(現・博報堂プロダクツ)入社。CMプロデューサーを経て、2018年から現職

映像のトランスフォーメーションで“顧客化”を実現する

2005年の創業以来“こしらえる”という力を武器にクライアントの課題解決に取り組んできた株式会社 博報堂プロダクツは、デジタルテクノロジーとフルファネルマーケティングを積極的に取り入れてコミュニケーションをアップデートし、“顧客化力”を磨き上げている。同社の強みや現在の取り組みについて武内寛雄氏、鍬形治氏、茂木敦氏にお話をうかがった。(収録:2021年7月5日)
【 CM INDEX 2021年8月号に掲載された記事をご紹介します。】


広告映像で磨いたスキルを
ドラマ制作、映像のライブ配信に拡張

— 貴社の強み、それを生かした事例について
武内:博報堂のグループ会社としてフルファネルで映像連携ができ、マーケティングに沿ってあらゆるコンテンツを制作できることが最大の強みだと考えています。
茂木:事業は広告が中心ですが、新しいチャレンジのひとつとして、Huluで配信中のオリジナルドラマ『THE LIMIT』※1を制作しました。動画をメインに扱うHDYグループ横断のプロジェクト「hakuhodo.movie」の企画で、演出から進行、撮影、編集までを当社が担当しています。
 ワンシチュエーションのドラマだったことから、撮影では新たな試みとしてハリウッド映画でスタンダードになりつつある大型LEDパネルを使ったスクリーン・プロセスという手法を採用しました。背景としてあらかじめ用意した360°映像を四方で囲んだLEDスクリーンに映し、その中で撮影を行うのですが、タクシーに乗車しているシーンであれば街のネオンやトンネルの中といった背景映像の環境光が再現され車体に映り込み、役者さんの顔を自然に照らします。リアルを追求したクオリティー面でも画期的で、グリーンバックでの合成に比べて制作時間が短縮されるため、コスト面でもメリットがあります。
 またHuluでの事例同様、広告映像制作のスキルを拡張する取り組みの一環として、映像のライブ配信を実施する専門チームを立ち上げました。コロナ禍で実際のイベントの需要が減る一方でオンラインイベントのニーズは高まっています。そうした背景から当社の誇る映像制作やライブ配信の技術を駆使した高品質なサービスをワンストップで提供できる体制を整えました。発足から1年ですが、すでにトップブランドのイベントなど数多くの実績を積んでいます。

※1 Huluオリジナル『THE LIMIT』
伊藤沙莉、門脇麦ら豪華キャストと玉田真也、岩崎う大、荻上直子といった気鋭の脚本家による全6話のオムニバスドラマ。日本唯一の大型LEDパネル専用スタジオでの撮影をはじめ、最新技術と設備を活用したハイクオリティーな映像作品となっている

世界有数のモーショングラフィック技術で
運用から体験までを作り出す

— ONE★PUNCHや動画ビジネスデザイン室ではさまざまなソリューションを提供されています
茂木:ONE★PUNCHは博報堂から出向している4人のCDと当社のプロダクション機能が一体となり、企画からアウトプットまでをワンストップで担うクリエイティブチームです。「“話が早い”ONE★PUNCH」と掲げている通り、CDの隣にプロデューサー、演出家がいるという強みを生かした機動力と、プレゼン段階でアウトプットイメージまでを提案できることが売りとなっています。今後はテレビにも運用型CMが取り入れられるでしょうから、CMやウェブ動画まで幅広く手掛けている彼らがプロダクツ独自のスキームを開発しています。
鍬形:昨年4月に立ち上げた動画ビジネスデザイン室はアッパーファネル、テレビCMを中心とした認知獲得のフェーズの領域に加えて、検討から購買といったミドルからロウアーファネルへの対応強化を目指しています。動画を活用した運用広告による成果にコミットするセクションで、ビデオグラファー、モーションデザイナー、プランナー、それにプロデューサーを加えた30人規模の組織です。運用型の動画はAfter Effectsなどのソフトを使ってグラフィック素材を動かすことで作るケースがあり、博報堂でもモーショングラフィックを活用したCMや動画を制作する取り組みがプロジェクト化されるなど、モーショングラフィックは特に注力している分野です。
武内:一般的にはモーショングラフィッカーと言われるのですが、我々は価値化できる存在としてモーションデザイナーと呼んでいます。メディアは自在で、1枚の商品パッケージの画像があればバナー、サイネージ、ポスター、ウェブ動画、テレビCMとあらゆるものを作ることができる。
鍬形:2Dにとどまらず3DCGの技術も習得しているため、平面を立体、つまり空間デザインの領域にまで仕事の幅を拡張しており、プロジェクションマッピングやセンサリングといった技術と掛け合わせれば体験を作り出すこともできる。今の広告に求められている運用と体験という両輪を動画ビジネスデザイン室が担っています。
武内:マルチクリエイター化を推進しており、企画・演出・撮影・編集・CGからPMまで一人七役、八役をこなすような“スーパーマン”が10人ほど在籍しています。話題になったとある外国車のCMは、アダプテーション素材があったとはいえ、CD、ビデオグラファー、プロデューサーのたった3人で作ったという実績があります。マーケティングコストが圧縮され生産性を高めていかなければならない中、最も重要なことはマルチスキルの少数精鋭チームで制作することで、一般的には20人以上の手が必要なところ、当社では3人で回すことができるんですね。そのスキルの高さには目を見張るものがあり、個人的には国内最強なのではと自負しています。
鍬形:オフショアでは2年前からタイの制作会社であるEmergeと資本提携しています。ハイクオリティーな動画は当社、量産型の動画はEmergeとそれぞれの得意分野を生かしてクライアントのニーズに対応しています。
— 今後についてお聞かせください
武内:博報堂プロダクツは“こしらえる”を生業にしており、博報堂プロダクツ単体で約1900人、Emergeなどのグループ会社を含めると約5000人が“こしらえる”会社なんです。あらゆるコミュニケーションがビジュアル化に進む中、映像領域からデザイン、企画、デジタルなどを横断させることでビジュアルトランスフォーメーションを推進し、我々の得意とする視聴者の顧客化をさらに強化していきたいと考えています。
茂木:視聴環境も視聴態度も急速に変化しています。“こしらえる”というベースは守りながら、「NEXT CRAFT, NEXT PRODUCE.」を掲げている通り、映像の役割や作り方のアップデートを続けていきたいです。
武内:以前はマスに訴求するメディアがテレビしか存在しなかったために、言いたいことを詰め込んだCMも少なくありませんでしたが、メディアの選択肢が急増したことから、テレビCMの健全化が進んだと感じています。ただ今でもテレビの持つ認知という役割だけを意識したCMも見られます。一方、認知にも好感、強制などの質があり、好感型の方がファネルの転換率が高く、購買に結びつきやすいことが分かっています。フェーズごとに最適なコンテンツを作りエンゲージを強化するアプローチの重要性が高まっているのではないでしょうか。
鍬形:運用型広告が存在感を増す中、メディア選定、ターゲットのインサイト抽出といったデータ分析から動画のプランニングへとつなぐことで、さらに効果的なフルファネルでの広告が可能になるはずです。今後もコミュニケーション全体の設計の強化に努め、より一層質の高いコンテンツを世に送り出していきたいと考えています。