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株式会社 ギークピクチュアズ


インタビュイー
取締役EXECUTIVE PRODUCER
村上 輝樹氏 
2001年、東北新社にて映像制作のキャリアをスタート。同社にて多くの大手クライアントのCMをプロデューサーとして担当した後、2011年に中国に渡り「GEEK PICTURES SHANGHAI」の設立を担当する。2018年に日本にベースを戻し、広告にとどまらずマルチメディア映像コンテンツの企画・プロデュースを行っている。

“絶対にいいものを作る”プロデュース力

CM好感度ランキングで上位を飾るヒットCMやドラマといった映像を主軸に、人々の心を動かす良質なコンテンツを数多く世に送り出すギークピクチュアズ。CM制作にとどまらずイベントや舞台の映像演出など、映像にまつわる360度をまかなう多角的な事業を展開している。アジアのエンターテインメントを牽引する存在を目指すという同社に、強みや今後の展望をうかがった。(取材:2023年8月4日)
【 CM INDEX 2023年9月号に掲載された記事をご紹介します。】


映像からエンターテインメントへ
日本の“クリエイトする能力”を生かす

— 貴社の設立の経緯、強みについてお聞かせください
 ギークピクチュアズは2007年に代表の小佐野保が立ち上げた会社です。社名にある「ギーク」は“オタク”が転じて“ひとつのことを極める”という意味を持つ言葉で、海外の方にも分かりやすい社名を意識したと聞いています。当時は「映像の力で世界を変える 未来を変える」というコーポレートスローガンのもと映像制作の会社としてスタートし、現在では「Unexpected Powers United.」をタグラインに、国内の映像作品にとどまらず広くエンターテインメントの領域をリードできる存在になることを目標としています。
 グループ全体で映像やプロモーションにまつわる360度をまかなえる構成となっており、映画・ドラマといった長編作品を手掛けるギークサイトをはじめ、私が2011年に上海で始めた海外での映像制作事業、アニメ、美術、CG・VFXや空間演出、体験型コンテンツ、キャラクターや音楽などの知的財産(IP)、メディアプロモーション、アートビジネスといった幅広い分野で事業を展開しています。そのほか栃木県にある「足利スクランブルシティスタジオ」は渋谷のスクランブル交差点を再現した大規模なスタジオで、Netflixの『全裸監督 シーズン2』や『今際の国のアリス』といったドラマ、MVなどでご活用いただいています。
 日本以外の拠点としては先ほど申し上げた上海のほか、インド、バンコクにオフィスを設けています。上海での映像事業はCM制作に始まり現在はCG制作、空間の映像演出などのデジタル領域に軸足を置きつつあります。2019年に設立したRED GEEK PICTURES(現・株式会社RED)は中国・アジアを中心としたクリエイティブカンパニーとしてイマーシブな映像に力を入れています。まさに今、エンターテインメント業界は大きな地殻変動が起きていて、ドラマや音楽で世界的なヒットを生み出す韓国、ゲームだけでなくドラマやバラエティー番組の海外進出が進む中国がアジアのイニシアティブを取っている状況です。そうした中で、日本は世界でもトップクラスを誇る漫画やアニメのコンテンツだけでなく、クリエイトする能力においても存在感を発揮できるのではと考えています。

THE SKY IS THE LIMIT/足利スクランブルシティスタジオ
都心から車で約1時間半の栃木県足利市内に6,585㎡の敷地にリアルサイズで再現されたスクランブル交差点のオープンセット。道路のガム汚れから落書きなど細部まで忠実に再現されている。

いいものを作り続けることで
信頼関係を高めていく

— 貴社が手掛けているCMはユニクロをはじめ当社のCM好感度調査でも上位の作品が多いですね
 代表の小佐野が長年手掛けていたソフトバンクさんをはじめ、サントリーさん、ユニクロさん、大塚製薬さんのCMなど、ありがたいことにトップクリエイターの方たちとの信頼関係が築けていることが大きいですね。小佐野が言い続けてきたのは「絶対にいいものを作ること、それを続けていればやがて自分たちにもいい形で返ってくるはずだ」という言葉です。トップレベルのクリエイターや監督は求めるものも高く、そうした要求にどうやって応えるか、いかに実現する能力があるかが常に問われる。要求の一つひとつに当社のプロデューサーが高いレベルで応えてきたことがCM好感度でも現れているのではないでしょうか。漫画『ドラゴンボール』の“精神と時の部屋”ではありませんが、時間の流れや重力が別次元とも思えるような仕事をしてきたプロデューサーが多く在籍していますので(笑)、不可能と思えることにもひるまずに挑戦していく推進力、プロデュース力が企業文化として根付いていると思います。
 ユニクロさんの仕事では、綾瀬はるかさん出演のもと桑田佳祐さんの楽曲で展開しているテレビCMだけでなく、若年層をターゲットとしたウェブCMも当社で担当しています。ウェブCMは細川美和子CDのもと、私がプロデューサーとして携わっている仕事で、直近ではラッパーのキッド・フレシノさんやカネコアヤノさんといった若年層に人気のアーティストを起用したジーンズのCM、トリンドル玲奈さんに出演いただいたインナーのCMなどを制作しました。シーズナルの商品に合わせたスピード感のある制作が求められるため、キャスティングから「ここなら商品が映える撮影ができるのでは」といったロケ地の相談までクライアントさんと直接コミュニケーションを取りながら進めています。
ユニクロ/UNIQLO「あなたと歩く。」ウェブムービー
2022年秋冬に展開した「あなたと歩く。ユニクロのジーンズ」キャンペーンで、第1弾ウェブムービーはアーティストのカネコアヤノとキッド・フレシノが共演した。監督は両者のMVを手掛ける山田智和氏。

日本が誇るコンテンツや技術力で
アジアをリードする企業へ

— 貴社が目指す優れたクリエイティブとは
 どれだけ人の心に届いて、心を動かすことができるかではないでしょうか。そのためにどんなことも絶対に手を抜いてはいけないという思いで向き合っていますし、そうしたクリエイティブを生み出せるクリエイターは自分が納得できるまで検証を重ねたり、不可能と思えることに挑戦したりと、諦めることがないんですよね。長年、トップクリエイターの方々と二人三脚でモノを作り続けてきた会社ですので、プロデューサーはじめスタッフ全員が体感として良質なものは何か、自然とベクトルを合わせることができているのだと感じます。
 採用活動をしていても「この会社ならいいものが作れそうだ」「ギークが作ったこの作品が好きだから」とクリエイティブへのリスペクトを持って応募してくれる志の高い人が自然と集まってきます。そうした個々の才能を最大限に生かし、どれだけいいものを作れるか、これからも追求していきたいですね。
 また今後はCMを中心とした映像制作に加え、当社がIPを有するオリジナルコンテンツの制作など、もうひとつの柱となるような新規事業にも積極的にトライしていきたいです。上海で暮らした7年間で日本のコンテンツの人気やクオリティーの高さを実感したのですが、日本の仕事はとにかく真面目で一つひとつが丁寧なんですよね。日本で生活していると当たり前に思えることでも、そうした真摯な姿勢や誠実さは世界のどこにも負けない美徳です。そうしたモノ作りを積み重ねていくことで、アジアのエンターテインメントの分野でも十分にアドバンテージを取れると考えています。