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株式会社ENGINE


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インタビュイー
平川 浩司氏 代表取締役社長
1987年株式会社ENGINE(旧・株式会社エンジンフイルム)設立時より参加。1992年に取締役就任。2004年より現職。

誠実に“楽しく”新領域へと向かっていく

1987年の設立以来、人と人とのつながりを大切にし、優れたクリエイティブワークでクライアントの幸せに貢献してきた株式会社ENGINE。昨年12月にエンジンフイルムから社名を変更し、「楽しくなかったらENGINEではない!」をモットーに映像制作会社の枠を超えた領域へと進む同社の取り組みについて、代表取締役社長の平川浩司氏にお話をうかがった。(収録:2022年1月18日)
【 CM INDEX 2022年3月号に掲載された記事をご紹介します。】


絶大な影響力を持つ広告だからこそ表現の細部にまで向き合う

— 直近に手掛けた代表的なCM、広告を制作する上で大切にしていることとは
 2021 61st ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSのフィルム部門 AカテゴリーでACCゴールドを受賞したヤマトホールディングスさんの企業広告※1が挙げられます。「未来より先に動け。」をコピーに、処方薬を自宅で受け取る高齢女性や行きつけのカフェで荷物を受け取る女性など、未来のロジスティクスをユーザーの視点から描いたCMです。BGMに流れる『見上げてごらん夜の星を』のアレンジ曲と落ち着いたトーンの映像のバランスも良く、利便性を伝えるだけにとどまらない、ご覧になった方の心に響くような情感あふれるコンテンツに仕上がっていると考えています。
 我々が広告を制作する上で重視しているのは、広告が世の中の邪魔にならないようにすることです。テレビ、デジタルにかかわらず、広告には絶大な影響力があります。たまたま見た広告の内容によってはネガティブな影響を及ぼす場合もあるため、マイナスになり得る要素をできる限りなくしていくこと。そのためにはあらゆる表現の細部にまで向き合う必要があります。また広告主、広告会社、クリエイティブディレクター、プランナーの方々のアイデアを具現化するのが我々プロデューサーの仕事ですので、お客さまの意に沿いながら社会的な状況を読み、プロジェクトをマネージメントしていく。あとは社員一人ひとりが高い意識を持ち、持っている力を惜しまずに発揮してくれればと思っています。

※1 ヤマトホールディングス/企業広告「おばあさんと処方薬」篇
高齢の女性が自宅からタブレットで薬を注文し、薬剤師がパソコンで処方箋を確認。そしてヤマトのスタッフが薬を女性の元に届ける内容で、デジタルプラットフォームの利便性を情緒的な表現で伝えた

フイルムに縛られずに領域を超えていく
立ち止まらず前進する“ENGINE”に

— 昨年12月にエンジンフイルムからENGINEへと社名を変更されました
 34年にわたって当社はフイルムによって成長してきた会社ではありますが、この10年で時代が劇的に変化を遂げたこともあり、社名変更は数年前から考えてまいりました。今後、業務領域を拡大し、総合制作プロダクションという領域をも超えていくために、フイルムに縛られることなく、どこへでも推進できるエンジンでありたいという思いを込め、「ENGINE」というストレートな名称に決定しました。
 社員たちも未来を見据えて、それぞれが変わっていかなければならないと実感していると思います。以前は私が組織の舵取りをしておりましたが、今は現場のプロデューサーでもある執行役員を中心に進めています。社内組織ではありますが、準カンパニー制を導入し、各セクションで何かを生み出す、投資をするといった取り組みを推進しようとしています。
 また、若い方々はデジタルが当たり前にある時代で生きていますから、それに合わせた対応が不可欠です。ENGINEが目指しているものは映像制作の延長線上にとどまらず、プロダクトの創出なども視野に入れており、すでに動き出しているプロジェクトもあります。ひとりよがりではなく、人や世の中の役に立つものであれば、何をやってもいいと考えています。
 阪神・淡路大震災や東日本大震災、コロナ禍といった逆風があった中で、我々は常に変化をしてまいりました。広告業界の変化はますます加速しているため、同じ地点にとどまってはいられません。クライアントや広告会社の方々の元で仕事をすることに慣れてしまっていますが、従来のスタイルを踏襲するだけでは厳しい時代になる。プロとして優れた映像コンテンツを制作するのは当然として、領域を超えてモノや体験を作り出すことにチャレンジし続けていかねばならないと感じています。

新しい企業ロゴ。シンボルマークは人と人との和を表す「繋がりの輪」をはじめ、人格、勇気、能力それぞれの輪、多面性、変化、無限、結束、行動力、個性の集合体、創造というENGINEの持つ精神性や伝統、目指すべき姿を表現している

— 新生ENGINEが力を入れていくこととは
 人を育てることに尽きると思います。近年では社員育成にフォーカスした取り組みをうたう企業も少なくありませんが、当社は創業以来、人本位の経営をしてまいりました。これまでに一度も売り上げノルマを課したことがないのですが、それでも約35年も生き延びているんです。実験ともいえますが(笑)。
 プレッシャーを与える手法としてノルマを導入するのではなく、「楽しくなかったらENGINEではない!」というビジョンを社員と共有することがモチベーションにつながっていると考えています。楽しければ頑張れますし、楽しい仲間がいればますますパワーが出ます。
 当社への入社を自ら望み、何百人という中から選ばれた才能あふれるスタッフばかりですから、コロナ禍の大変な中でも仲間と助け合いながら仕事をしていれば、必ず楽しい瞬間が訪れます。それが最大のモチベーションではないでしょうか。

心を込めて誠実に仕事に向き合う
社員一人ひとりが主役になれる環境作り

 コロナ禍でコミュニケーションが取りにくくなっていることもあり、社名変更に合わせて再構築した当社の理念やビジョンを社員に伝えています。現状、広告という影響力のあるコンテンツの制作が主な業務ですから、ENGINEの社員として一人ひとりが仕事の重みを自覚することが大切です。当社が最も重要と考えている「誠実な人柄」というと弱く感じるかもしれませんが、自ら勇気を持って前に進むことで本来の能力は磨かれるのではないでしょうか。
 これまで広告だけでなく映画をはじめとしたさまざまなエンターテインメント関連のコンテンツの制作にも力を入れてきましたので、時代に沿ったコンテンツを世に送り出すことも含めて、社員たちにはあらゆる領域でのモノ作りを体験し、挑戦を続けてほしい。その体験が後輩、さらにその後輩へと引き継がれるよう、そうした環境作りをしていくのが私の使命だと考えています。社員一人ひとりが自ら考え、チャレンジしていく。社員の自己実現を応援するのが会社の役割であり、プロデューサーもプロダクションマネージャーも、年齢性別問わず、思いきり楽しみながら前進していってほしいと考えています。そして心を込めて精一杯に仕事をしてお客さまに喜んでいただき、少しでもお客さまや社会の役に立つこと。そのために利益だけを追求するのではなく、何事にも誠実に向き合うこと。そうした個々の姿勢がENGINEという企業全体の信頼につながっていくと考えています。