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株式会社 電通クリエーティブX


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インタビュイー
松木 俊介氏 代表取締役社長執行役員
1986年に株式会社 電通に入社。マーケティングセクションを経て、第5CRプランニング局長、第19ビジネスプロデュース局長を歴任。2021年1月より現職。
日本産業カウンセラー協会公認 キャリアコンサルタント/産業カウンセラー

ネットワークを通して世界水準のソリューションを

日本初のテレビCMを制作した電通映画社(1943年設立)を原点とし、電通グループの一翼として数多くの広告を手掛けてきた株式会社 電通クリエーティブX(クロス)。プロデュース力、クリエーティブ力を“クロス”させて新しいユーザー体験を創出し、事業領域を海外にも拡げている。代表取締役社長執行役員の松木俊介氏に同社の取り組みについてお聞きした。(収録:2021年6月9日)
【 CM INDEX 2021年7月号に掲載された記事をご紹介します。】


— 貴社が手掛けた直近の代表的なCMについて
 最近では本田技研工業さんの「VEZEL e:HEVフルモデルチェンジキャンペーン」※1が注目を集めています。この作品は当社がプロモーション全体のコンテンツを一手に担いました。さまざまな国籍や年齢、バックボーンを持つ各界の第一線で活躍する13人のメンバーで結成された“GOOD GROOVER”を起用し、各種映像やウェブサイト、OOH 広告などの制作に加え、試乗体験イベントやInstagramを主とするSNS連携施策を実施しました。近頃、テレビCMを制作してほしいといった具体的な依頼ではなく、「何を作るかは未定だけれども、一緒にコンテンツを作ってほしい」という依頼が増えており、仕事の頼まれ方が変わってきています。そのため当社ではメディアやコンテンツの効果的な使い方を提案できるプロデューサーの育成に注力しているところです。

※1 本田技研工業/VEZEL e:HEVフルモデルチェンジキャンペーン
“GOOD GROOVER”がスマホや多様なカメラで撮影したムービーで構成。藤井風のCM書き下ろし新曲『きらり』はVEZEL e:HEVのコアメッセージ「世界に、あたらしい気分を。」を鮮やかに表現

電通グループの国内外ネットワーク
国境を越えたグローバルな制作にも対応

— 貴社の強みについてお聞かせください
 ひとつは電通グループの中にある制作会社であること。これは他社にない優位点だといえます。電通グループは「Integrated Growth Partner」を掲げ、広告に限らず、クライアントのすべての課題に対し、統合的なソリューションを長期的に提供することを目指しています。電通というエージェンシーのほか、当社をはじめとする制作会社やPR会社、イベント会社などさまざまな事業会社があり、グローバルでは世界145以上の国と地域で6万人を超える従業員が働いています。「Open Teaming」という考え方のもと、一人ひとりがビジネスの起点となり、「Teaming Platform」によってつながり、アイデア、ネットワーク、プロデュース、エグゼキューションなどグループの総力を結集してクライアントのさまざまな課題を解決することを目指します。今後は当社でも、電通以外のグループ会社からの依頼や課題の川上から参加してアウトプットの提案を求められるケースなどが増えると思います。ビジネス課題が複雑化し、従前の方法では対応しきれなくなる中、私たちは社名にある「X」(英語圏でTrans[超える]を意味する略語)の通り、「BX(Business Transformation)」「CX(Customer Experience)」「DX(Digital Transformation)」という新領域でのアウトプットへの対応力を強化していきます。
— グローバルビジネスにも注力されています
 電通グループにおける売上総利益全体の約6割を海外事業が占めています。当社としても必然的にグローバル対応が求められるため「国際部」を設けています。英語や中国語、フランス語などを自在に操るグローバルプロデューサーが複数名在籍しており、各国のインサイトリサーチや、クリエーティブプランニング、プロデュースなどに広く対応できる体制が整っています。さらに電通グループの海外事業全体を担うDentsu Internationalを含めた89カ国・210のプロダクションとのネットワークを駆使し、各言語に対応するバイリンガルクリエーティブチームを現地で構築することも可能です。ネイティブレベルでコンテンツ制作という専門性の高い議論やスタッフィングができる点は大きな強みです。
 また、当社と株式会社ピクトが2015年に立ち上げた「SHOOT IN JAPAN」プロジェクトでは、コロナ禍を背景に「REMOTE SHOOT IN JAPAN」をスタートしました。日本のリアルをリモート撮影できる体制を整え、海外クライアントに対して日本の映像を使ったコンテンツ制作ができる環境を構築しています。オンラインであれば海外へ発注、海外から受注も可能になると考えています。お互い行き来はできないものの、オンラインによってグローバルの領域が一気に近づきました。
 このほか電通グループには「Content Symphony」という、グループ内のグローバル案件を一括管理するプラットフォームがあり、当社は国内制作会社として唯一登録されています。今後は予算や各国のアダプテーションの事例といった情報をデータベースとして整備し、また各国の拠点同士が連携を強化することで、グローバルクライアントにご満足いただける質の高いサービスを提供していく予定です。

新しいユーザー体験を創出するDentsu Craft Tokyo

— 2019年にDentsu Craft Tokyoを発足されました
 Dentsu Craft Tokyoはプロデューサーやテクニカルディレクター、エンジニアに加え、AIやウェブ、デザインなど各領域のスペシャリストが企業の枠を超えてひとつ屋根の下に結集している “クリエーティブハウス”です。
 今年2月、コムアイさんとオオルタイチさんによるプロジェクト“YAKUSHIMA TREASURE”、映像作家・辻川幸一郎氏とコラボレーションし、インタラクティブな映像作品『YAKUSHIMA TREASURE ANOTHER LIVE from YAKUSHIMA』※2をオンライン配信しました。屋久島・ガジュマルの森でYAKUSHIMA TREASUREによる一発録りのライブパフォーマンスを実施し、テクノロジーを駆使して空間データや音像データを収集・再構築することで、肉眼ともカメラで撮影された映像とも異なる新しいライブ体験として昇華しました。この手法を応用することで、例えば世界遺産のような立ち入りが制限されている場所の時空をオンライン上で再現することができます。発足時と比べてメンバー体制が充実してまいりましたので、今後も数多くの新しいユーザー体験を創出してくれると期待しています。

※2 YAKUSHIMA TREASURE ANOTHER LIVE from YAKUSHIMA
文化庁委託事業「文化芸術収益力強化事業」による、芸術・エンタメ分野の新たなビジネスモデル創造を目的に採択された作品。「カンヌライオンズ2021」デジタルクラフト部門でブロンズを受賞

— テレビCMはどのように変化していくとお考えですか
 今後、多くの企業にとってテレビCMは“社会価値の獲得”が第一義的な意義を持つようになると考えています。販売促進という役割以外に、社会課題の解決という共通の目的を持つ仲間やコミュニティを増やし、ファン化することに主眼が置かれていく。社会課題への取り組みが企業活動の基盤を強化する時代ですので、そのことを広く発信し、ビジネスを展開する社会的な承認をしっかりと獲得することにますます注目が集まります。そのため企業は中長期視点で、レリバンシーなブランディングに効果的なテレビCMを活用していくはずです。
 また、テレビCM制作プロセスにおける「社会品質」にも焦点が当たると思います。制作過程の労務上の課題だけでなく、万人に届くテレビCMの特質上、目や耳の不自由な方にも配慮が行き届いた、「誰ひとり置いていかないテレビCM」という視点を持つことは、テレビCMの社会品質を左右する大きな要素になると考えています。