株式会社シースリーフィルム
インタビュイー
代表取締役社長
久松 真菜氏
2006年、葵プロモーション(現AOI Pro.)入社。2012年にプロデューサーへ昇格。2020年に制作部部長に就任。人の心を動かす映像作りのためクラフトへの情熱を注ぎ続け、大塚製薬、日本郵便、資生堂、ソフトバンクなど数々の企業のCMを手掛ける。2024年1月より現職。ADFESTグランプリなど国内外で多数受賞。
久松 真菜氏
2006年、葵プロモーション(現AOI Pro.)入社。2012年にプロデューサーへ昇格。2020年に制作部部長に就任。人の心を動かす映像作りのためクラフトへの情熱を注ぎ続け、大塚製薬、日本郵便、資生堂、ソフトバンクなど数々の企業のCMを手掛ける。2024年1月より現職。ADFESTグランプリなど国内外で多数受賞。
人への投資が企業の未来を切り拓く
シースリーフィルムは東京と名古屋に拠点を置き、テレビCMをはじめ幅広い領域の映像コンテンツの企画・制作を手掛けている。同社が属するAOI Pro.グループとして女性初の代表取締役社長に就任した久松真菜氏に、シースリーフィルムの強みや今後の展望をはじめ、プロデューサーとしても活躍する同氏の仕事への向き合い方についてうかがった。(取材:2024年7月22日/CMに関する取材は8月19日に実施)
【 CM INDEX 2024年9月号に掲載された記事をご紹介します。】
社長と現役プロデューサーを兼務
制作現場で得る知見や時代感覚を大切に
— 代表取締役社長に就任された感想をお教え願います
社長就任を打診されたときにはシンプルに面白そうと思い、すぐに決断しました。プロデューサーとして現場に立ち続けたいと思う一方で、部長としてマネジメントを経験していく中で自然と経営にも関心が向いていたのですが、そんな思いを伝えていたAOI Pro.の潮田一社長からは「実際に経営者を経験してみればいいのでは」と数年前に勧められておりました。その後コロナ禍を経て社会環境や映像業界が大きく変化する中、グループ会社全体として進化のタイミングを迎えたこともあり、このたびの社長就任のお話をいただくこととなりました。
現在、私は社長業に加えてこれまで通りプレイヤーとしてプロデューサーを兼務しているのですが、これはかなり珍しいスタイルではないでしょうか。新たなメディアや撮影手法が次々に生まれる変化の激しい時代ですので、制作現場の実態やトレンドを身をもって理解しないことには適切な経営判断ができないと考えたのです。現場で得た知見や時代感覚があるからこそ、社内外で自信を持って提案や助言をすることができますし、組織を正しい方向へ導けると思っています。
現在、私は社長業に加えてこれまで通りプレイヤーとしてプロデューサーを兼務しているのですが、これはかなり珍しいスタイルではないでしょうか。新たなメディアや撮影手法が次々に生まれる変化の激しい時代ですので、制作現場の実態やトレンドを身をもって理解しないことには適切な経営判断ができないと考えたのです。現場で得た知見や時代感覚があるからこそ、社内外で自信を持って提案や助言をすることができますし、組織を正しい方向へ導けると思っています。
— 経営と育児を両立されているとうかがいました
社長就任翌月の2月に出産し、産休を経て4月から仕事に復帰しました。現在、制作会社で社長を務めている女性は2、3人ほど。これまでに母親になったのは恐らく私が初めてだと聞いています。難しいこともありますがこの選択に一切迷いはありませんでした。企業のトップが仕事と育児を両立することは後進の女性たちに勇気と活力を与えますし、性別を問わず働きやすい環境作りの推進にもつながるはずだと思います。長期的にはクライアントやエージェンシーを含めた業界全体の意識改革にも貢献できればと考えています。
— 貴社の社風や強みとはどのようなものでしょうか
当社の強みは“人”です。新卒や中途といった多様な経歴を持つ社員が集まっているので一見バラバラに見えますが、私も含めもの作りが好きでシースリーフィルムに愛着を抱いているスタッフが本当に多い。東京だけでなく、名古屋オフィスのメンバーも団結力が強いんです。現在の社員数は約100人で、社員一人ひとりの顔が見える規模感もひとつのメリットかもしれません。今年からオフィスをフリーアドレスにしたことも奏功して、互いを支え合うような風通しの良いコミュニケーションが実現できていると感じております。社内で良いコミュニケーションが取れているからこそ、クライアントやエージェンシーを巻き込む強いチームワークが生まれ、我々の大きな強みとなっていると思っています。
今年1月の新体制への移行を機に、3月4日付で東京本社を港区赤坂に移転。東京本社と2つの名古屋の拠点、編集室と録音ブースを備えたEBISU_LABO.を活動拠点に、シースリーフィルムならではの創造性の高い価値あるコンテンツのプロデュースに努めている。
— 貴社の代表的なクリエイティブワークについて、制作意図や撮影時のエピソードをお教え願います
今年8月27日よりオンエアされたキリンビール『KIRIN Premium ジンソーダ 杜の香』のCMを担当しました。ジュニパーベリー100%で仕上げたプレミアムジンソーダの新商品のCMで、高橋一生さんと三吉彩花さんに出演いただき、森で深呼吸するような清涼感やボタニカルな要素を表現しています。演出はAOI Pro.同期入社で切磋琢磨してきた後藤匠平監督(CluB_A)にお願いしました。
新カテゴリーへの挑戦のCMでもあるので、ファンタジックな企画で商品の特徴をしっかり届けるにはどうすればいいかを後藤監督と何度も議論しました。高橋さんと三吉さんの織りなす透明感のある世界観を描くと同時に、商品の特徴を生かしたシズルやおいしさを描くことを意識しています。
天候判断が難しい7月上旬のロケということもあり、梅雨のない北海道もロケ地候補でしたが、より仕上がりのイメージにマッチした西伊豆で2日間ロケを行いました。1日目は雨でグラフィック撮影のみを行ったのですが、翌日は幻想的な霧が出てくれました。この霧を生かしてCM撮影に挑み、神秘的な情景を演出することができました。そして「ここは晴れてほしい」というシーンでは見事に晴れ、奇跡のような撮影になりました。霧の中で撮ったおふたりの表情も素晴らしく、スリリングな撮影でしたが結果的にはチームの一体感が高まり、動画もグラフィックも想定以上にクオリティーの高い仕上がりとなりました。CMをご覧になった方がひとりでも多く商品を手に取ってくださったらうれしいですね。
新カテゴリーへの挑戦のCMでもあるので、ファンタジックな企画で商品の特徴をしっかり届けるにはどうすればいいかを後藤監督と何度も議論しました。高橋さんと三吉さんの織りなす透明感のある世界観を描くと同時に、商品の特徴を生かしたシズルやおいしさを描くことを意識しています。
天候判断が難しい7月上旬のロケということもあり、梅雨のない北海道もロケ地候補でしたが、より仕上がりのイメージにマッチした西伊豆で2日間ロケを行いました。1日目は雨でグラフィック撮影のみを行ったのですが、翌日は幻想的な霧が出てくれました。この霧を生かしてCM撮影に挑み、神秘的な情景を演出することができました。そして「ここは晴れてほしい」というシーンでは見事に晴れ、奇跡のような撮影になりました。霧の中で撮ったおふたりの表情も素晴らしく、スリリングな撮影でしたが結果的にはチームの一体感が高まり、動画もグラフィックも想定以上にクオリティーの高い仕上がりとなりました。CMをご覧になった方がひとりでも多く商品を手に取ってくださったらうれしいですね。
キリンビール/KIRIN Premium ジンソーダ 杜の香「心の森」篇
くるりの『ばらの花』のアレンジ曲をBGMに、無数の気泡が浮かび上がる森で三吉彩花が高橋一生に「ほんとにおいしいジンソーダって知ってます?」と尋ねる様子や、ふたりが商品を飲む姿などを映した。
くるりの『ばらの花』のアレンジ曲をBGMに、無数の気泡が浮かび上がる森で三吉彩花が高橋一生に「ほんとにおいしいジンソーダって知ってます?」と尋ねる様子や、ふたりが商品を飲む姿などを映した。
社員の才能や可能性に投資を行い
企業としてのさらなる成長を目指す
— 今後に向けた貴社の展望や新たな取り組みについてお聞かせください
企業としての成長を目指し、今後は「人への投資」に注力してまいります。これは社員一人ひとりが自分の将来の目標や興味のあることを明確化し、その実現のために会社がどんな支援をすべきかを私に直接プレゼンしてもらうという取り組みです。例えばAIに興味を持っている社員に5年前から投資していたら、今頃はAIのスペシャリストとして活躍していたかもしれないですよね。社員の個性や才能に先行投資をすることで、数年後に当社がより多面的なクリエイティブ集団として成長できればと考えています。もちろん投資対効果が重要ですが、モチベーションアップという意味でも社員一人ひとりが自らを見つめ直し、何でもいいので「好き」を突き詰めてほしい。最初は小さな種かもしれませんが、将来的には大きな木に育つ可能性が十分にあると考えています。
私自身は人が好きということもあり、プロデューサーとして大勢の人と力を合わせて映像を作ることが幸せで、これぞ天職だと感じています。社長、プロデューサー、育児に共通するのは周囲とのコミュニケーションやチームワークが不可欠で、間違いなく自身の情熱をかき立てるクリエイティブな仕事だということ。これらの両立は容易ではありませんが、ワクワクする気持ちを大切にしながらシースリーフィルムを一段上のステージに引き上げられるよう、これからも走り続けたいと考えています。
私自身は人が好きということもあり、プロデューサーとして大勢の人と力を合わせて映像を作ることが幸せで、これぞ天職だと感じています。社長、プロデューサー、育児に共通するのは周囲とのコミュニケーションやチームワークが不可欠で、間違いなく自身の情熱をかき立てるクリエイティブな仕事だということ。これらの両立は容易ではありませんが、ワクワクする気持ちを大切にしながらシースリーフィルムを一段上のステージに引き上げられるよう、これからも走り続けたいと考えています。