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株式会社ADKクリエイティブ・ワン


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インタビュイー
辻 毅氏
事業役員 クリエイティブ本部長  クリエイティブディレクター/コピーライター
テレビ媒体担当3年、メディアプランナー3年を経て、2003年に転局試験でコピーライターに。2020年に現職。TCC会員。カンヌ、アドフェストなど受賞多数。

和田 優輝氏
第2クリエイティブ・プロデュース局長 プロデューサー
子役時代に映像制作スタッフに憧れて、1998年株式会社キャラバン入社。2004年株式会社ADKアーツ入社。PM、プロデューサーを経て、2019年より現職。

“ワンチーム”で拡張するクリエイティブの可能性

ADKのクリエイティブ部門と制作プロダクションのADKアーツが統合され、2019年に設立されたADKクリエイティブ・ワンは、広告会社と制作会社を掛け合わせた新業態のクリエイティブ・エージェンシーだ。戦略からアウトプットまでを“ワンチーム”で提供する同社の強みや可能性などについて同社の辻毅氏、和田優輝氏にお話をうかがった。(収録:2021年5月11日)
【 CM INDEX 2021年6月号に掲載された記事をご紹介します。】


— ADKクリエイティブ・ワンのミッションとは
辻:プランニング、クリエイティブ、アクティベーションと制作プロダクション機能、また関連する営業機能を持ち合わせています。プランニング機能を有する広告会社と制作を担当するプロダクションは別領域で仕事をするのが一般的ですが、当社は戦略立案からアウトプットまでワンチームで完結できることが最大の強みです。こうした業態のクリエイティブエージェンシーはこれまでになく、企業の在り方そのものが新しいチャレンジだと考えています。
和田:広告を作ることに変わりはありませんが、同じ企業となったことによって互いに見えていなかった部分が見えるようになり、課題解決までの時間短縮や質的向上といった変化をこの2年間で実感しています。
辻:ADKグループでは「顧客を資本と考える顧客体験創造会社」を掲げ、顧客を資本化する「顧客資本マネジメント」を実践していますが、その一連のサイクルにおいて、当社は主に「顧客体験デザイン」の領域をカバーしています。アッパーファネルの認知から購買、リピート、ファン化という流れがあり、これまでは購買させることをゴールに据えるケースが多かったのですが、ファンの分析による認知獲得の理想的なフレームの構築や、ファンのLTV(Life Time Value)を高める体験の拡充、ファンが見込客を呼び込む仕掛け作りなど、顧客体験を軸にブランドを強化するモデルをプランニングに組み込んでいきます。
和田:この実現に向け、データマネジメントやデジタルコミュニケーションに加えて、リアルなアプローチを併走さることが重要だと考えています。コロナ禍の影響で仕事の打ち合わせがリモートになるなどデジタルを活用するシーンが急速に広がっていますので、広告でも日常的な接点はデジタルで構築し、特別な機会はリアルで体験させていくことになるのではないでしょうか。

photo by Kenji Takahashi

本社エントランス横には気鋭のアーティストの作品を紹介するアートギャラリーを設置。オフィスデザインコンセプト「ADKパワーアイデアキャンプ」のもと、社内コミュニケーションを活性化させ、新鮮なアイデアが生まれるオフィス空間作りを目指している

— 新たなコミュニケーションのモデルを構築していくに当たり、クリエイティブの果たす役割とは
辻:ブランドの持つ世界観や価値、コンセプトに対する親近感を消費者に抱いてもらうためのストーリーの軸を作ること、これが今後のクリエイティブ・ディレクションの大きな役割になると考えています。
 現在『ADK CREATIVE MALL』※1としてクリエイティブ・チームを11の専門領域に再編し、クライアントのニーズや課題に合わせてチームを選択できるような組織作りを進めております。今後はますますビジネスの専門化が進むと予想されますので、領域ごとに最適なソリューションを提供できるよう努めてまいります。
和田:CDの横にプロデューサーがいて、モールの専門チームと制作部隊が一体となってアウトプットを作っていくことがポイントとなります。制作会社がワンストップを掲げて広告主と直接取り引きをする流れが生まれる中、当社の独自性を分かりやすく表現する言葉が“ワンチーム”です。かつてのように一案件に何十、何百時間も掛けられる案件だけでなく、ときにはスピード感も重視される時代となった今は、短時間で最大限のパフォーマンスを高めるという点で我々の組織は時代に合っているのではないでしょうか。
辻:素晴らしいアイデアでもアウトプットが弱ければ伝わりません。プロデュースのクラフト力があって達成できるものですから、ワンチームであることの価値は質、スピードなどの面で優位性があると実感しています。

※1 『ADK CREATIVE MALL』は「クリエイターを自由に選べる専門店街」を掲げ、クライアントのニーズが高度化、専門化する中でミスマッチを解消し、課題に対して最適なソリューションを提供できるクリエイターをアサインできるサービス

— オリィ研究所『分身ロボットカフェDAWN ver.β』など、クリエイティブの領域を拡張しています
辻:分身ロボットを使うことで体の不自由な方の雇用を創出するなど、ビジネスを創造する新たな可能性を生むクリエイティブワークとして、ACC賞2部門でグランプリを獲得しました。またNTTドコモさんと推進している動画辞典『みんなのうちなーぐち辞典』は、うちなーぐちは沖縄語といった意味なのですが、その言語を話せない沖縄の若い人が増えていることを背景に、辞典を映像コンテンツ化してアーカイブ化し、文化として残していくというプロジェクトで、広告電通賞などを受賞しています。
和田:最近手掛けた資生堂さんの『エリクシール』のキャンペーンでは『ドラえもん』とコラボし、ブランドのサステナビリティをテーマに35歳の未来のしずかちゃんが登場するコンテンツを公開しました。資生堂とドラえもんという意外性もあり、多くの反響をいただきました。
 そのほかでは、『クレヨンしんちゃん』の“野原ひろし”を主人公に、昨年6月に展開したサントリー食品インターナショナルさんの『クラフトボス』とのコラボキャンペーンなども話題となりました。
辻:クリエイティブの領域を広げていかなければ我々の未来はないと考えています。やはり従来型の広告だけでは人々を動かすことは難しいですし、“1億総クリエイター時代”といわれ、YouTuberや一般の方が作った動画があふれる中、現状維持型の表現では飽きられてしまう。新しい価値や驚きを提供すること、広告コミュニケーションはここにどれだけチャレンジできるかがキーになってくるのではないでしょうか。
和田:僕のように映像を中心に仕事をしてきた人間からすると、先人が築いてきた経験や技術を「時代に合わない」と切り捨てるのではなく、守破離といいますか、型を引き継ぎつつ新しい型を生み出したいと考えています。
 またクリエイティブの守備範囲が広がれば広がるほどCDの負担も大きくなりますから、CDの目指すアウトプットを実現するためのチーム作りが重要になります。“勝ち残る”ためにチームのメンバーがそれぞれの領域を超えて意見交換し、アウトプットを磨き上げていく、そんな組織作りを目指してまいります。

オリィ研究所『分身ロボットカフェDAWN ver.β』
障害のある方が遠隔地から分身ロボットを操作して接客を行うカフェを2019年に期間限定でオープン。就労支援を目指す継続的な事業として、2021年6月に日本橋に常設店を開業予定