〈CMトレンドに学ぶ 生活者の心の捉え方〉ブランドの唯一性を生かすことが鍵
2024年6月度・商品を際立たせた『未来のレモンサワー』のCMの強さ
急速に変化する現代、どのようなCMが生活者の心を動かしているのか。本コーナーではCM総合研究所のさまざまなデータからCM動向を深掘りし、生活者の心の捉え方をを探っていく。今回は6月度に作品別総合1位に輝いた『未来のレモンサワー』を事例に“商品ヒーロー型”CMの力を検証する。
【 CM INDEX 2024年8月号に掲載された記事をご紹介します。】
徹底的にそぎ落としたクリエイティブで
画期的なレモンサワーの誕生を印象づける
CM好感度ランキングの上位には有名タレントを起用したCMや長年続く人気シリーズのCMが並ぶことが多いが、2024年6月度は商品にフォーカスしたクリエイティブのCMを展開したアサヒビールの新商品『未来のレモンサワー』が商品・サービス別集計で総合5位、作品別では3000人調査で同社初となる総合1位に輝いた。
未来のレモンサワーは世界初となる本物のレモンスライスが入った画期的な缶チューハイで、『スーパードライ』の生ジョッキ缶と同じくフルオープン缶を採用し、フタを開けるとレモンスライスが浮かび上がる。昨今、各社がレモンサワーに力を入れており、昨年10月の酒税改正も税率は据え置きと安さを売りにしやすいカテゴリーであるが、本商品は一般的な商品の倍近いプレミアムな価格(希望販売価格:298円・税込)ながら、6月11日に首都圏・関信越の1都9県で発売されると直後から売り切れる店が続出した。発売同日からオンエアしたCMはすべて30秒で展開。開始から3秒ほどは無音で暗闇を映し、映画『グレイテスト・ショーマン』のオープニング曲と「未来、はじまる」の語りとともにパッケージが映し出される。商品が開栓されると容器の内側を描く映像に変わり、透明の缶の中で浮き上がるレモンスライスに「本物」というコピーが重なる内容だ。商品を前面に押し出した映像表現に加え、ナレーションやテロップをそぎ落として「本物」のひと言に収斂させることで、“本物のレモンスライス入り”という特長を際立たせている。
直近20年におけるRTD商品の立ち上がり時のCM好感度を確認すると、RTD商品はコモディティー化しているため、タレント起用やストーリー仕立てといった“差別化”の工夫が見られるCMが多い中、未来のレモンサワーがトップのスコアを獲得している(図表1)。また9位のサントリー『銀座カクテル』のCMは、銀座千疋屋のマンゴーがカットされてカクテルになるまでをシズル感たっぷりに描き、老舗果物専門店のフルーツを使ったお酒というユニークネスを訴求。未来のレモンサワーと同様に、商品の持つ独自性やニュース性が視聴者の心に響いたといえる。
未来のレモンサワーは世界初となる本物のレモンスライスが入った画期的な缶チューハイで、『スーパードライ』の生ジョッキ缶と同じくフルオープン缶を採用し、フタを開けるとレモンスライスが浮かび上がる。昨今、各社がレモンサワーに力を入れており、昨年10月の酒税改正も税率は据え置きと安さを売りにしやすいカテゴリーであるが、本商品は一般的な商品の倍近いプレミアムな価格(希望販売価格:298円・税込)ながら、6月11日に首都圏・関信越の1都9県で発売されると直後から売り切れる店が続出した。発売同日からオンエアしたCMはすべて30秒で展開。開始から3秒ほどは無音で暗闇を映し、映画『グレイテスト・ショーマン』のオープニング曲と「未来、はじまる」の語りとともにパッケージが映し出される。商品が開栓されると容器の内側を描く映像に変わり、透明の缶の中で浮き上がるレモンスライスに「本物」というコピーが重なる内容だ。商品を前面に押し出した映像表現に加え、ナレーションやテロップをそぎ落として「本物」のひと言に収斂させることで、“本物のレモンスライス入り”という特長を際立たせている。
直近20年におけるRTD商品の立ち上がり時のCM好感度を確認すると、RTD商品はコモディティー化しているため、タレント起用やストーリー仕立てといった“差別化”の工夫が見られるCMが多い中、未来のレモンサワーがトップのスコアを獲得している(図表1)。また9位のサントリー『銀座カクテル』のCMは、銀座千疋屋のマンゴーがカットされてカクテルになるまでをシズル感たっぷりに描き、老舗果物専門店のフルーツを使ったお酒というユニークネスを訴求。未来のレモンサワーと同様に、商品の持つ独自性やニュース性が視聴者の心に響いたといえる。
商品の核となる価値を見極めたクリエイティブが
CMの伝達力を高める
未来のレモンサワーのCMはどのように受容されたのか。総合1位となった30代の男性を筆頭に、ターゲットである成人層から多くの支持を獲得し、CM好感要因では「商品にひかれた」と「宣伝文句」で総合1位、その他「映像・画像」や「音楽・サウンド」でポイントを伸ばした(図表2)。またCMに好感を示した89人のうち成人層全員の87人が商品を「ためしてみたい」または「愛用している」と回答。モニターからは「商品がとてもおいしそうで飲んでみたい」「すぐに買いに行きたくなった」といった声が寄せられた。伝えるべき点を絞り込むことによって商品の新しさや魅力を印象づけることに成功し、「飲んでみたい」「買いたい」という気持ちにさせたことが分かる。
過去を振り返ると、封筒から取り出されるシーンを通して「世界で最も薄い、ノートブック。」というメッセージを際立たせたアップルジャパン『MacBook Air』のCM(2008年2月度)や、ダンボールのピアノを組み立てて使うまでを映して「つくる。あそぶ。わかる。」という特徴を伝えた任天堂『ニンテンドーラボ』のCM(2018年4月度)など、商品の核となる価値を見極め、「何を伝えるか」を明確にしてクリエイティブに反映することでヒットしたCMも少なくない。
今回の未来のレモンサワーのような革新的な商品であれば、思い切った“商品ヒーロー型”の表現にすることが有効な手段といえる。一方、商品そのものに差別化できるポイントがない場合には、ブランドを体現するCMのシリーズ化といった唯一無二の強みを作ることが鍵だ。ブランドの持つ唯一性を生かした表現にすることで、CMの伝達力が高まるといえよう。
過去を振り返ると、封筒から取り出されるシーンを通して「世界で最も薄い、ノートブック。」というメッセージを際立たせたアップルジャパン『MacBook Air』のCM(2008年2月度)や、ダンボールのピアノを組み立てて使うまでを映して「つくる。あそぶ。わかる。」という特徴を伝えた任天堂『ニンテンドーラボ』のCM(2018年4月度)など、商品の核となる価値を見極め、「何を伝えるか」を明確にしてクリエイティブに反映することでヒットしたCMも少なくない。
今回の未来のレモンサワーのような革新的な商品であれば、思い切った“商品ヒーロー型”の表現にすることが有効な手段といえる。一方、商品そのものに差別化できるポイントがない場合には、ブランドを体現するCMのシリーズ化といった唯一無二の強みを作ることが鍵だ。ブランドの持つ唯一性を生かした表現にすることで、CMの伝達力が高まるといえよう。
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ご希望のテーマに合わせたレポートをご提供いたします。さまざまな角度からの検証が可能ですので、ぜひお問い合わせください。
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