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広告主インタビュー 三菱自動車工業 株式会社【2023年度 CM好感度 躍進企業No.1】


商品と広告の連動による好循環を実現

水川あさみとキャラクターの“デリ丸。”が登場する『デリカミニ』のCMが好評で、CM好感度 躍進企業の首位となった三菱自動車。2023年度のコミュニケーション活動の狙いや今後の展望を同社の中村達夫氏にお聞きした。
(取材:2024年4月16日)
【 CM INDEX 2024年6月号に掲載された記事をご紹介します。】

三菱自動車工業 株式会社
代表執行役副社長(営業担当)
中村達夫氏

1986年東京大学工学部機械工学科卒、同年三菱商事入社。KTB社(ジャカルタ)取締役(企画担当)、三菱自動車 執行役員 アセアン本部長、三菱商事 執行役員 自動車事業本部長などを経て、2023年4月より現職
代表的なCM
デリカミニ「デリカミニ デビュー!」篇(2023年4月11日オンエア開始)
「♪つぶらな瞳デリカミニ 頼れるボディデリカミニ」といったキャンディーズの『年下の男の子』の替え歌をBGMに展開。母親役の水川あさみが家族を乗せた『デリカミニ』を運転する様子や、同車の化身であるキャラクターの“デリ丸。”と一緒にキャンプを楽しむ様子を描いた。

キャラクターの“デリ丸。”を通して
“カッコかわいい”デザインと力強い走行性能を訴求

—『デリカミニ』のCMが多くの支持を集め、2023年度のCM好感度 躍進企業1位となりました
 率直にうれしいです。三菱の車は「乗れば良さが分かる」とよく言われるのですが、これまで三菱自動車との接点が少なかった若い女性やファミリー層といったお客さまに乗っていただくには、認知や関心を高めるとともに、魅力的なブランドだと感じていただくことが大切です。そのためには広く早くメッセージを届けられるテレビCMが大きな役割を果たすと考えています。
 『デリカミニ』のCMは昨年4月から展開すると放送直後から好評をいただき、同年上期の受注実績は約18000台と計画比126%を達成することができました。特にうれしかったのは5月前期のCM好感度調査で作品別総合1位になって以降、社員や販売会社がものすごく元気になったことです。当社のシンパシーを再認識してくれた営業スタッフも多く、「デリカミニなら何台でも売ってみせる」といった声をたびたび耳にしました。お客さまから好評価をいただけたことはもちろん、インナーのモチベーション向上という意味でもCMの影響力は絶大だったと感じています。
— デリカミニの広告展開の狙いをお教えください
 デリカミニは『デリカ』の名を冠したネーミングの通り、力強さと快適性を強みとする軽スーパーハイトワゴンで、目とラインが印象的なフロントフェイスのデザインにはかなり力を入れました。開発に当たっては愛知県岡崎市にあるデザインスタジオに社長から若手社員まで大勢の担当者が集まり、熱い議論を重ねながらアイデアを詰めていきました。役職を超えて自由に意見を交わすことで社員の士気が高まったことも印象深いですね。議論の中でデザイナーは“やんちゃ坊主”という言い方をしていましたが、ファンシーな愛らしさではなく、タフな走行性能を感じさせるどこか憎めない“ブサカワ”なビジュアルでいこうと方向性が定まり、つぶらな瞳が特徴の“カッコかわいい”デリカミニが誕生しました。
 CMではこうした特徴を打ち出したいと考え、“デリカミニの化身”であるキャラクターを軸とした企画が生まれました。「デリ丸。」という名前はお客さまの声を少しでも取り入れたいという思いからSNSでの公募により決定したものです。実は最後に「。」をつけたのは私の発案で、これにはいくつか意味があります。「。」を入れて引っかかりを作ることで少しでも関心を持っていただければという思いがひとつ目。もうひとつは当社が過去にピリオドを打ち、“新・三菱自動車”としての未来をデリカミニとデリ丸。が作っていくんだという意気込みを込めています。CMでは水川あさみさんにデリ丸。との絶妙な掛け合いを通してカッコかわいい世界観を見事に表現していただきました。また読売広告社の皆さんと小島淳平監督には新型車の認知拡大といったKPIを踏まえた上で、多くの視聴者を楽しませる企画・演出を提案いただき、大変心強かったです。こうした皆さまのご協力があったからこそ、デリカミニのCMシリーズが大きな反響を頂戴できたと思っています。
 CM公開後はデリ丸。がおかげさまで一躍人気者となり、ぬいぐるみやTシャツといったグッズを販売するなど、キャラクターとしてひとり歩きしている状態です。今年1月に開催された『東京オートサロン』では第3弾のCMと連動した、雪だるまをモチーフとしたデリ丸。のぬいぐるみの展示が話題を集めるなど、デリカミニだけでなく、デリ丸。もさまざまな場面で活躍しています。

耐久消費財ではなく“嗜好品”を作る企業ブランドに
新・三菱自動車の未来に向けて存在意義を再定義

— 貴社が広告を作る上で大切にされている考え方とはどのようなものでしょうか
 広告を作る際には「誰に共感してほしいか」という視点を大切にしています。デリカミニでは主に30、40代の女性を想定してCMを制作しました。一方で、今年2月発売の新型1トンピックアップトラック『トライトン』のCMは「“冒険”の定義を変える。」というメッセージで展開しました。やや表現が堅く伝わりにくいのではという意見もありましたが、100人のうち90人に届かなくても残り10人の心が強く動けばと私から提案させていただいた言葉です。
 というのもコロナ禍を機に、多くの方が人生や時間の使い方を見つめ直したと思うんです。なかでも子育てや仕事のステージを終えた世代のうち、サーフィンやトライアスロンなど、今までとは違う新しい趣味を始める方々も少なくありません。そうした新たなチャレンジをしようとする方々に対して、「トライトンがあれば挑戦できるよ」と“バディ”のように背中を押すことができるのではないか。トライトン、ひいては三菱自動車がお客さまの人生の相棒になっていきたい。そんな思いを込めて、コミュニケーションを展開しました。
 こういった生活者に寄り添うコミュニケーション活動の背景には未来に向けて、耐久消費財ではなくお客さまに選ばれるような“嗜好品”を作る企業ブランドに変わっていきたいという強い思いがあります。そのために私たちが大切にしているのが“三菱自動車らしさ”です。多くの方々に三菱自動車らしさを感じていただくにはモノ作りだけでなく、コトやトキの提供も重要です。例えば当社が長年継続しているお客さま向けオートキャンプイベント『スターキャンプ』の開催や、山梨県早川町にある『パジェロの森』での森林保全活動、お子さま方が職業体験をする『キッザニア』への協賛といったさまざまな社会活動を積み重ねることで企業イメージがより立体的になり、三菱自動車が幅広い世代のお客さまから長く愛されるブランドになればと考えています。
— 今後のコミュニケーション活動の展望についてお聞かせ願います
 もちろん企業としての持続的な成長には商品開発が重要ですし、広告活動も欠かせません。商品と広告が車の両輪のように噛み合い、商品の魅力を最適な形で発信するコミュニケーションを実現できれば、想定を超える成果や好感を得ることも可能です。まさに今回のデリカミニのCMを通して、商品と広告の連動による好循環を多くの社員が実感できたと感じています。
 今年4月、ある方から「未来は過去のヘリテージから作られる」といったお話をうかがう機会がありました。当社にはパリダカや世界ラリー選手権での優勝といった輝かしい実績がありますので、これらをベースに当社のバリューや存在意義を再定義することも、新・三菱自動車の未来に向けた重要な取り組みではないでしょうか。今後も三菱自動車らしさを追究しながら、お客さまの心に響く広告活動を続けていきたいと考えています。
写真:長谷川大
その月のCM業界の動きをデータとともに紹介する専門誌です。