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JAC AWARD 2023 グランプリ受賞者のインタビュー 【ディレクター部門 髙原 春菜氏】


 一般社団法人 日本アド・コンテンツ制作協会(JAC)が主催する『JAC AWARD』は映像文化の発展を目的に、映像クリエイターの発掘・人材の育成・映像技術の向上や若手のモチベーションアップを図り、制作サイドの見地から表彰を行う賞として2007年に設立された。2023年度はコロナ禍で開催が中止されていた最終審査会のリアルイベントを4年ぶりに実施した。
 本記事ではディレクター部門でグランプリに輝いた髙原春菜氏(株式会社ハット)に受賞対象となった仕事の概要や広告制作に携わる上で大切にされている考え方、今後挑戦したいことなどについて語っていただいた。
【 CM INDEX 2024年3月号に掲載された記事をご紹介します。】

心の機微を捉え共感を呼ぶコンテンツ作りを目指す

髙原春菜氏
株式会社ハット
企画 演出部
1997年大阪府生まれ。2020年、京都精華大学卒業後、株式会社ハットの企画演出部に入社。消費されない、心に残るCMを目指します。
【受賞歴】第10回BOVA協賛企業賞
「認める?」篇
「多様性を認める、ってなんだ?」をコピーに、職場でゲイであることを告白した男性の葛藤や、カミングアウトせず働く男性が描かれ、最後は「ありのままいたいだけ。」のコピーを映した。

動画はこちら

— 受賞作品の制作エピソードと反響について
 「多様性」というテーマは正解のない難しい課題のため、問題の本質にシリアスに向き合うか、多様性をキーワード化して一点突破のユーモラスな表現にするか、作品の方向性についてはかなり迷いがありました。明るくてコメディータッチの演出が得意ではあるのですが、これまでとは違ったトーン&マナーの表現や、テーマへの向き合い方にも挑戦してみたいと思いました。
 「多様性」と一緒に「認める」という言葉が使われることがありますが、私はそれにずっと違和感があったんですね。「認めてあげる人」と「認めてもらう人」がいて、マイノリティーはどうして認めてもらわなくてはいけないのか。加えてマイノリティーとされる人の中にもさまざまな考え方や価値観があるはずだという思いから、LGBTQ+を題材に“多様性の中の多様性”にまで踏み込んで描いてみたいと思いました。

登場人物の心の機微を
「多様性」の持つ複雑さに重ねて表現

 そこで考えたストーリーは、ゲイであることをカミングアウトした男性と同僚たちがオープンな関係性を築けたように見える中、男性が「やっぱ女子力高いんだ」といった悪気はなくとも偏見がにじむ言葉に笑顔で対応しながらも、影では悩んでいる。そしてそんな彼らに少し冷やかな視線を送っていたように見えた男性が、実はゲイであることを隠して生活しているというものです。最後の「ありのままいたいだけ。」というコピーには、他者の性的指向をわざわざ認めようとする風潮が消え、そのことに誰も違和感を抱かなくなることが本当の多様性ではないかという思いを込めました。
 昨年はメダリストだったので、今年こそグランプリを取りたいと意気込んで制作に臨みましたが、社内では「分かりにくい」「登場人物が多すぎるのでは」とあまり良いとはいえない反応でした。ただ、初めて見たときに「あれ?」ともう一度見返したくなるような分かりづらさや、登場人物の心情の複雑さは、まさに今の時代の「多様性」という難しいテーマに重なると思っていたんですね。迷いはありましたが、企画や演出を変えることなく最後まで自分が表現したかったことを貫きました。「今年は無理かもしれない」と思いながら結果を待っていましたので、グランプリと聞いたときには本当にうれしかったです。
— これから挑戦していきたいこととは
 表現のトーンやストーリーにかかわらず見た人に何らかの共感をしてもらえる作品を目指しています。今回でいえば表面上は分かりにくい感情や葛藤といった繊細な心の機微を描きたかったんですね。また演出だけでなく企画も大好きなので、企画から携われる案件を増やしていけたらと思います。学生時代から「ペンを売りたい」など明確な課題を解決するためのアウトプットの方が楽しく取り組めたんです。今回の経験を大切にしながら、さまざまな課題解決につながる企画、演出ができるようスキルを磨いていきたいです。
その月のCM業界の動きをデータとともに紹介する専門誌です。