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データベンダーが紐解くマーケティングの潮流:CMデータから見える 企業の価値と経営方針(前編)


インテージ、エム・データ、エスピーアイ、CM総合研究所が現在のマーケティングにおけるトピックやトレンドにフォーカスする本シリーズ。第6弾となる今回は、エム・データが開発を進める金融機関向けサービス『TV Rank FINTECH』から見えるCMデータの新しい活用方法にフォーカスする。企業からのメッセージであるCMを露出量やブランド別、表現など多角的に分析することで、業績予測や企業価値が見えてくるという。同社の梅田仁氏にレポートいただいた。
【 CM INDEX 2024年3月号に掲載された記事を2回に分けてご紹介します。(第1回/全2回)】

梅田仁氏
株式会社エム・データ
ライフログ総合研究所 所長

元アップル シニアマーケティングプロデューサー。元日本アイ・ビー・エム パーソナルシステム事業部宣伝部長。IBM時代にCM総合研究所のデータをいちはやく社内導入

証券コードと結びついたTVデータ
新たな金融指標としての可能性

 『TV Rank』というツールをご存じだろうか。民放各局と大手広告代理店の出資を受けてTVの放送内容をデータベース化しているエム・データが提供するクラウド型データサービスである。
 今回は主に金融機関向けに開発中の『TV Rank FINTECH』というツールを使って、データ・アナリストの観点からTV-CMがどのように見えるのか紹介していこう。
 TV Rank FINTECHは東京証券取引所に上場している全銘柄のTV-CMとTV番組での露出状況を網羅したサービスだ。ランキングやトレンドなどのメニューのほかに上場銘柄の証券コードを入力するだけでさまざまな情報をダッシュボード形式で閲覧できるので、各銘柄のTV媒体上での露出状況や動向を簡単に一覧することができる。金融機関にとっては保有銘柄の状況把握や今後の投資判断、融資やM&Aなど銘柄に関する概況データとしての利用が可能となる。一般企業にとっても競合分析やマーケティング戦略の立案に欠かせないツールである。
 早速その内容を見ていこう。図表1は2023年11月19日週のTV-CM銘柄ランキング、この週のすべての上場銘柄のTV-CM放映秒数の上位10銘柄を抜粋したものとなっている。この週最もTV-CMを放映したのはアサヒグループHD(東証2502)だった。
 表中央に「CM-GX」とあるのはゴールデンクロス、その週にTV-CM放映トレンドの転換点を迎えたことを表している。TV-CM放映秒数の短期トレンド線(7週移動平均)が中期トレンド線(13週移動平均)を上回ったことを示しており、このサインが現れるとその銘柄のTV-CM放映量が今後継続的に上昇していく傾向がある。言い換えるとこのCM-GXは、TV-CMに代表されるその銘柄の企業活動が今後活発化していくサインだと捉えることもできる。これが金融機関にとってどれだけ価値のある情報かお分かりいただけるだろうか。
図表1:TV Rank FINTECH/TV−CM銘柄ランキング(2023年11月19日週)

TV露出の拡大と株価が連動
企業活動の大小を測るデータに

 それでは実際のトレンドについて見てみよう。図表2は上からアサヒグループHDの週あたりのTV-CM放映量(秒数)、同じくTV番組露出量(秒数)、TV-CMと番組の放映量を合算したアサヒグループHDのTV放映秒数中期トレンド線(13週移動平均)と短期トレンド線(7週移動平均)で、短期線が中期線を上抜けている箇所がいくつかあるのがGX(ゴールデンクロス)である。TV露出の短期トレンドが中期トレンドを上回り、その銘柄のTVでの情報量が短期的に上昇している状況を示している。その理由は上昇している箇所によってはTV番組露出が増えていることであったり、TV-CMが増加していることだったりするわけで、実際の番組内容やTV-CM内容をこのツールを使って見れば情報量が上昇した背景を深掘りできる。
 それでは、このGXが現れると何が起きるのだろうか。図の一番下のラインは各週の株価の終値である。いかがだろう、短期トレンド線が上昇している複数の箇所で株価の上昇も見られないだろうか。特に23年1月23日週から続くTVトレンドの上昇期には株価も大幅に上昇しており、この期間の株価の上昇率は33.8%にもなる。
 この時期は継続的にアサヒグループHDのTV露出が拡大しており、それを受けるかのように株価もまた連続して上昇している。TV露出に代表される企業活動の拡大が、株価の上昇となって現れているように見えるのだ。
 その銘柄のTV露出の拡大は、あくまでその企業の活動の一部を反映しているのにすぎない。
 しかしTV-CMとTV番組でその企業の情報量が増加するということは、その企業の営業活動、顧客の反響、ニュースや話題などが拡大していることを示している。それだけの変化が株価に反映されない方がむしろおかしいのかもしれない。企業活動の大小や変化を測定するデータとして、このTVの放送記録を用いる方法には可能性があると感じていただけるだろうか。
図表2:TV Rank FINTECH/アサヒグループホールディングス(2022年8月22日〜2023年11月20日)

その月のCM業界の動きをデータとともに紹介する専門誌です。