広告主インタビュー 日清紡ホールディングス株式会社【2022年度 CM好感度 獲得効率No1】
若者へ訴求し、社名の認知度を高めるCM
動物が登場するコミカルなCMで、CM好感度 獲得効率トップに立った日清紡ホールディングス。消費者と直接の接点のない同社がCMを展開する目的、そして具体的な成果とは。同社の喜田清弘氏に語っていただいた。
(取材:2023年4月26日)
(取材:2023年4月26日)
【 CM INDEX 2023年6月号に掲載された記事をご紹介します。】
インタビュイー
喜田清弘氏
日清紡ホールディングス株式会社
コーポレートコミュニケーショングループ グループ長
中央大学理工学部卒。1993年日清紡績株式会社(現 日清紡ホールディングス株式会社)入社。メカトロニクス事業本部営業部、総務本部総務部などを経て、2003年秘書部広報課へ異動。22年コーポレートコミュニケーショングループ長。53歳。
日清紡ホールディングス株式会社
コーポレートコミュニケーショングループ グループ長
中央大学理工学部卒。1993年日清紡績株式会社(現 日清紡ホールディングス株式会社)入社。メカトロニクス事業本部営業部、総務本部総務部などを経て、2003年秘書部広報課へ異動。22年コーポレートコミュニケーショングループ長。53歳。
代表的なCM
歌おう!ニッシンボー「うま」篇(2022年4月11日オンエア開始)
「歌おう!ニッシンボー」シリーズの第1弾。牧場で3頭の木曽馬が「♪ニッシンボー 名前は知ってるけど〜」というおなじみのCMソングを独特なハーモニーで歌う姿をフルCGで描いた。第2弾ではカワウソがブルース調に歌唱。今年4月開始の最新作にはクオッカが登場した。
「歌おう!ニッシンボー」シリーズの第1弾。牧場で3頭の木曽馬が「♪ニッシンボー 名前は知ってるけど〜」というおなじみのCMソングを独特なハーモニーで歌う姿をフルCGで描いた。第2弾ではカワウソがブルース調に歌唱。今年4月開始の最新作にはクオッカが登場した。
認知度が低いと採用活動時に学生が集まらないという危機意識から
— CM好感度獲得効率でトップ。視聴者の記憶に深く残るCMであることの証ですね
2021年度はトップ10に入り、今回はもっと良いところまで行くかなと予想していましたが、まさか1位になるとは思いませんでした。このCM好感度調査の結果は非常に参考になります。というのも「日清紡のCMを見たことがありますか」と聞いたのではなく、純粋想起で弊社の名前が出ていることは、皆さんがCMを覚えてくださっているということであり、日清紡の社名なり存在なりが認知されていることの裏付けとなるような結果ですから。
また、今回のCM好感度調査では2021年度と出稿の量は同じでも、CM好感度が3倍になっています。これはテレビCMを長年続けてきている蓄積が大きく効いているからではないでしょうか。限られた予算の中でいかに効率よく成果を出すかということを考えているつもりですが、ともかく継続していることが良い結果につながっているのかなと思っています。
また、今回のCM好感度調査では2021年度と出稿の量は同じでも、CM好感度が3倍になっています。これはテレビCMを長年続けてきている蓄積が大きく効いているからではないでしょうか。限られた予算の中でいかに効率よく成果を出すかということを考えているつもりですが、ともかく継続していることが良い結果につながっているのかなと思っています。
— テレビCMを展開されている目的とは
弊社がテレビCMに力を入れるようになったのには切実な理由がありました。1988年から行われている日経の企業イメージ調査で95%以上あった弊社の認知度が2000年から下降していったのです。
弊社は完全なBtoB企業で、商品が消費者とコミュニケーションをとるツールにはならず、接点がなかなか見いだせない中での認知度の低下。その影響が顕著に表れるのが採用です。認知度がないと学生さんが集まらないという危機意識があり、2000年代初頭から企業広告に力を入れはじめました。
当初の広告は事業内容を紹介し、「日清紡はこういう会社です」と伝えるものでしたが、結果が出ない。実際、弊社の事業は短いCMの時間で皆さんに知っていただくのには限界があります。
それで思い切って社名を覚えてもらうことに徹しようと、12年から犬と人の二人羽織の「ドッグシアター」シリーズをスタートしたところ、これが功を奏し、認知度が上がっていきました。19年にはホールディングスになって10周年ということで、CMのトーンを変えるよう指示があり、マレーグマを登場させた「クマーシャル劇場」に。「ドッグシアター」がうまくいっている中での変更で、吉と出るか凶と出るか心配でしたが、キャラクターは変えつつも『NISSHINBOの歌』は残した結果、成功。そして22年から「歌おう! ニッシンボー」シリーズの「うま」篇と「カワウソ」篇を順次オンエアしました。
弊社は完全なBtoB企業で、商品が消費者とコミュニケーションをとるツールにはならず、接点がなかなか見いだせない中での認知度の低下。その影響が顕著に表れるのが採用です。認知度がないと学生さんが集まらないという危機意識があり、2000年代初頭から企業広告に力を入れはじめました。
当初の広告は事業内容を紹介し、「日清紡はこういう会社です」と伝えるものでしたが、結果が出ない。実際、弊社の事業は短いCMの時間で皆さんに知っていただくのには限界があります。
それで思い切って社名を覚えてもらうことに徹しようと、12年から犬と人の二人羽織の「ドッグシアター」シリーズをスタートしたところ、これが功を奏し、認知度が上がっていきました。19年にはホールディングスになって10周年ということで、CMのトーンを変えるよう指示があり、マレーグマを登場させた「クマーシャル劇場」に。「ドッグシアター」がうまくいっている中での変更で、吉と出るか凶と出るか心配でしたが、キャラクターは変えつつも『NISSHINBOの歌』は残した結果、成功。そして22年から「歌おう! ニッシンボー」シリーズの「うま」篇と「カワウソ」篇を順次オンエアしました。
— CM作りで留意されている点はありますか
CM作りに関しては、『NISSHINBOの歌』を使うことを基本に、あとは「昨年を超える作品を」ということ以外に注文は出さず、クリエイターの中治信博さん(ワトソン・クリック)や古川雅之さん(電通)らにお任せしています。我々は人権や法律などで問題ないかをチェックするだけです。彼らとは「ドッグシアター」シリーズからの長いお付き合いで、安心してお願いしています。苦労されているとは思いますが。
コンセプトとしては若い人たちに社名を覚えてもらうことを柱に作っていただいています。
コンセプトとしては若い人たちに社名を覚えてもらうことを柱に作っていただいています。
テレビCMで採用のエントリー数も
スペシャルサイトへのアクセス数も増加
— 認知度がアップしたことによる具体的な成果はどのようなものですか
商品広告ではないので、CMで売り上げが伸びるわけではなく評価は難しい。ただ認知度アップとリクルーティングは連動しています。
「ドッグシアター」シリーズの放映を開始すると、採用のエントリー数は前年度より30%ほど増えました。エントリーした理由をアンケートしてみると、30%くらいの学生が「CMを見て」という項目を選んでいることが分かりました。多いときでは40%にもなります。やっぱりテレビの影響力は大きいと思います。
また、効果がよく表れるのは、弊社のスペシャルサイトへのアクセス数ですね。このサイトは「ドッグシアター」シリーズを始めたときから、「言いっぱなしではいけない、興味を持っていただいた方にはしっかりお伝えするすべを用意しておかないと」と、CMと同じトーンで、いろいろな動物が事業内容などを紹介しているもので、テレビCMを流している月は流していない月の10倍から11倍ものアクセス数になります。
「ドッグシアター」シリーズの放映を開始すると、採用のエントリー数は前年度より30%ほど増えました。エントリーした理由をアンケートしてみると、30%くらいの学生が「CMを見て」という項目を選んでいることが分かりました。多いときでは40%にもなります。やっぱりテレビの影響力は大きいと思います。
また、効果がよく表れるのは、弊社のスペシャルサイトへのアクセス数ですね。このサイトは「ドッグシアター」シリーズを始めたときから、「言いっぱなしではいけない、興味を持っていただいた方にはしっかりお伝えするすべを用意しておかないと」と、CMと同じトーンで、いろいろな動物が事業内容などを紹介しているもので、テレビCMを流している月は流していない月の10倍から11倍ものアクセス数になります。
— 今後の展開について
実は20年にCMの出稿をやめたところ、先ほどの日経の調査で認知度がグンと下がってしまいました。このままでは認知度は落ちていくと考え、翌年には再開した経緯があります。
CMをやめると認知度が下がるということは、弊社のことは忘れられてしまったということです。ですから高止まりするまでは、若い人に社名を覚えていただくという方針に大きな変化はありません。
広告を打たなくても企業としての認知度がしっかりと高止まりしているような状態になれば、例えば事業の中身を訴求するような広告展開も考えられますが、今はそういう段階に進むには時期尚早ですね。
多くの皆さまから評価いただいたテレビCMをどのようにして企業価値の向上につなげていくか、これが今後の課題です。
我々コミュニケーショングループでは広告・広報・IR・インターナル広報が一体となって、あらゆるステークホルダーから認知・共感・信頼されることで企業価値を高めていくことを目標にしています。
具体的には、テレビCMなどで会社の存在・名前を認知してもらい、広報活動を通して会社のことを理解してもらいます。理解があれば我々の事業活動に共感してもらえるようになります。そしてIR活動や採用活動、営業活動などで信頼が得られれば、例えば株を買ってみようとか、就職してみようとか、製品を購入してみようとか、いろいろな行動を促すことになります。これが企業価値の向上につながるのだと思います。オーバーラップする部分もありますが、大きく言えばそのようなイメージを描いています。もちろん、まだ道半ばですが。
CMをやめると認知度が下がるということは、弊社のことは忘れられてしまったということです。ですから高止まりするまでは、若い人に社名を覚えていただくという方針に大きな変化はありません。
広告を打たなくても企業としての認知度がしっかりと高止まりしているような状態になれば、例えば事業の中身を訴求するような広告展開も考えられますが、今はそういう段階に進むには時期尚早ですね。
多くの皆さまから評価いただいたテレビCMをどのようにして企業価値の向上につなげていくか、これが今後の課題です。
我々コミュニケーショングループでは広告・広報・IR・インターナル広報が一体となって、あらゆるステークホルダーから認知・共感・信頼されることで企業価値を高めていくことを目標にしています。
具体的には、テレビCMなどで会社の存在・名前を認知してもらい、広報活動を通して会社のことを理解してもらいます。理解があれば我々の事業活動に共感してもらえるようになります。そしてIR活動や採用活動、営業活動などで信頼が得られれば、例えば株を買ってみようとか、就職してみようとか、製品を購入してみようとか、いろいろな行動を促すことになります。これが企業価値の向上につながるのだと思います。オーバーラップする部分もありますが、大きく言えばそのようなイメージを描いています。もちろん、まだ道半ばですが。
文:坂本俊夫 写真:髙野宏治
その月のCM業界の動きをデータとともに紹介する専門誌です。