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広告の今を語る テレビ・デジタル広告を統合的に可視化 — ニールセン デジタル株式会社 —


ニールセン デジタル株式会社と株式会社ビデオリサーチが共同し、それぞれの「デジタル広告視聴率(DAR)」と「全国テレビCMデータ」を掛け合わせて「人」ベースの広告視聴者を統合的に測定できる「トータル広告視聴率(TAR)」を昨年4月より提供している。同サービスの特長や現在のコミュニケーションの考え方などについてニールセン デジタル株式会社の大澤暢也氏にうかがった。
【 CM INDEX 2023年3月号に掲載された記事をご紹介します。】

インタビュイー
大澤暢也氏
ニールセン デジタル株式会社
セールス&アナリティクス
ニールセン デジタル
ディレクター セールス

デジタル広告運用のやり方によってオンターゲット率に課題が見られる

— デジタル広告に見られる課題とは
 数年前からクッキーレス化が進み、各媒体のターゲティングの精度に課題が生まれています。対応できている媒体もあれば、できていない媒体もある中で、多くの場合、広告主は広告会社からの提案内容を受け入れるしかないのが現状です。最も多く使われる属性である25〜44歳の女性のオンターゲット率を見てみると、昨年4月から12月の数値の平均は50.2%でした。つまり半分は当たっていましたが、半分は当たっていない現状が見受けられました。これはあくまでも平均なので運用をしながらターゲットに当たったかどうかを確認している広告主であれば70〜80%という高いレートも見られる一方で、クッキーレスの影響を受けたり、状況確認をしなかったことで影響を受けたキャンペーンによっては、オンターゲット率が50%を大きく下回るものがあったのも事実です。また男性ターゲティングでは平均30%台という属性グループもあり、広告運用のやり方によってオンターゲット率は大きなギャップが生まれる可能性があるといえます。広告はコミュニケーションであり、ユーザーに情報を届けることが目的で、リーチ接触がなければ商品やブランドの認知と理解は獲得できません。その大前提が欠けてしまっている状況はマーケットとしても問題だと感じています。

利用媒体が一部に集中する現状
リーチが伸びなく、フリークエンシー過多が発生

 インプレッションを増やしても、リーチが伸びずにフリークエンシーだけが上昇するという懸案もあります。昨年のDARの利用実態として、配信された広告のインプレッションの割合はYouTube、Facebook、Instagram、Twitter、Yahoo!JAPANで 68%を占めました。YouTubeのユーザー数が約7500万人、Yahoo!JAPANが約8500万人と巨大な媒体ではありますが、日本の1億2000万人を単体でカバーできるわけではありません。また広告主はデモグラフィックや親近感、関心事を示すアフィニティを設定するためターゲットの対象は絞られ、競合各社だけでなく異なる業種の広告主が似たようなデモグラフィック、アフィニティを利用することで、対象の広告枠の在庫が厳しくなっているのではないかという事象がDARで確認されました。利用の約7割が上記5媒体に集中している現状では、タイミングによってはリーチが伸びない(フリークエンシーは増える)、入札に対するインプレッションの単価が通常より高くなる、ということが起こっています。また、当社のモバイル視聴率データであるMobile NetViewにてスマートフォンの利用時間で見ると、この5媒体で占めている割合は34%にとどまっており、非常に限られた領域でターゲットされたユーザーを捕らえにいっていることも分かっています。もし残りの66%の領域にある媒体を利用できれば、より効果的なコミュニケーションができる可能性があります。
 リーチが伸びない中でインプレッションを増やしたとしても、同じユーザーに接触する可能性が高まり、フリークエンシーだけが伸びていきます。一定のフリークエンシーは重要ですが、過剰な接触は不快感につながり広告が逆効果になる恐れもあります。そのため、DARにてリーチの鈍化、フリークエンシーの急上昇が起きた際には配信を停止したりリーチできる媒体にスイッチしたりして変化に対応する必要があります。

図表1:主要5媒体※に配信された広告のインプレッションの割合

図表2:インプレッションとリーチの関係(サンプル)

「人」ベースのリーチとフリークエンシーを
さまざまな切り口から検証可能

— 「デジタル広告視聴率(DAR)」の特徴について
 DARの大きな特徴は「人」ベースで広告接触が分かるという点です。ひとりのユーザーが所有する複数のデバイスをマージして数値を算出するため、非重複の人数ベースでのリーチが分かります。またDARで計測しているメディアは前述の5媒体のほかにLINEや放送局の見逃し配信など200以上にのぼり、広告メディアとして出稿対象と認識されているほぼすべてがカバーされているため、人ベースでの広告接触を精緻に検証することが可能です。
 広告主のお客さまが重視するポイントは前述のリーチとフリークエンシーにあることが多いのですが、その人数と接触回数のデータを3日後に確認することができるリードタイムの短さも特徴のひとつです。また20、30、40代など属性ごとに出稿プランを組み立てているお客さまの場合ですと、それぞれの属性で計画通りに接触させることができたかを確認するケースがよく見られます。ばらつきや偏りがあると広告効果は低減しますので、媒体の特性を生かしてプランニングできていたのかを検証することが可能です。

図表3:DARの計測プロセス

デジタルマーケティングの最適化をサポート
定期的な接触実態の確認が重要

 データを提供するのが私たちの仕事ではありますが、データはあくまでも素材ですから広告主、広告会社のお客さまに対してはデータの見方や活用方法、例えばフリークエンシーが急伸しているといった場合にはその情報をお伝えするなど、デジタルマーケティングの最適化に向けたサポートを行っています。
 お客さまのニーズ次第ではありますが、基本的には初めてDARを導入するお客さまにはスタートから1週間のタイミングで初動の確認をするよう提案しています。DARを長く活用されているお客さまも隔週、あるいは1カ月のスパンで数値を確認されています。例えば以前実施したキャンペーンでリーチもフリークエンシーも安定していた媒体が、リーチが伸びずにフリークエンシーが増加するということもあります。似たようなターゲットとアフィニティを設定した企業が同時に出稿すれば起きうることであり、前例にとらわれず定期的に接触実態を確認することが重要なのです。

テレビとデジタルを統合的に測定
重複人数なども明らかに

— 「トータル広告視聴率(TAR)」の概要や特徴についてお聞かせください 
 ビデオリサーチ社の全国テレビCMデータとニールセンのDARを組み合わせ、テレビとデジタルを横断したトータルでの広告効果を測定できるのがTARです。このTARもDARと同じく人ベースのリーチとフリークエンシー、また属性ごとのリーチ分布を見ることができます。
 テレビの広告枠はGRPで取り引きされ、そもそもテレビの詳細な視聴データをご覧になったことのある方は非常に少数ではありますが、TARではテレビ視聴データもリーチだけでなく、インプレッションの露出量でも算出できるため、テレビとデジタルの比較がしやすいことも特徴です。これまで見えにくかったテレビの効果がクリアになり、広告費から算出すればインプレッションやリーチ、ターゲットに対するリーチの単価などもご確認いただけます。
 またテレビとリーチの高かったデジタルメディアの上位5媒体およびデジタル全体が計測の対象となるのですが、その中でテレビとデジタルの重複、テレビ単体、デジタル単体のリーチが確認でき、テレビとデジタルメディアA、テレビとデジタルメディアBといったブレークダウンも可能です。テレビのリーチに対するデジタルによるカバレッジのインクリメンタルやインプレッションに対するリーチといった指標が分かるため、活用されているお客さまからご好評をいただいております。

図表4:TARによるリーチ・フリークエンシーの計測範囲

リーチのカバレッジの広いテレビをデジタルのターゲティングで補完

— テレビ、デジタルメディアそれぞれの特性やTARの活用事例について 
 「テレビの効果はなくなっているのでは」「デジタルは本当に効果的なのか」といった声を聞くことがありますが、実際はテレビとデジタルの両方を実施することでリーチの最大化は可能です。テレビとデジタルの接触実態を同時に見ると両者が相互に補完し合っていることが今回のTAR実施事例から分かっています。つまりTARの活用が広告費のバランスを見るきっかけにもなりそうです。
 テレビはやはりリーチのカバレッジが大きく、どのキャンペーンにおいても、それは変わりません。ただ属性という点で年齢が高い層にリーチが取りやすい傾向にあるので、M/F1・2層をどのようにデジタルでカバーしていくかがポイントになります。 
 例えば、あるお客さまのケースではテレビのリーチによって人口の大多数に当たっていたのですが、実際の購買属性のリーチは十分であった一方で、将来的にユーザーとなってもらいたい若年層に対するリーチは不十分という状況でした。そこでデジタル媒体でターゲティングをして補完することで、テレビとデジタルのトータルで現在の購買属性、将来の購買属性のリーチをカバーしました。TARを実施したほとんどの広告主さまがこのような形でデジタルのリーチ補完が上手くいっているか興味を持たれています。テレビならではの広いリーチとデジタルのターゲティングというそれぞれの特性を活用した好事例がTARを使うことによって発見できています。
 また他の業態の広告主はテレビのキャンペーンに注力したことによって、テレビのリーチは十分獲得できたのですが、フリークエンシーが上昇し過ぎてしまった事象もございました。幸いデジタルではあまりフリークエンシーが多くない媒体を選択されていたのでトータルでのアベレージはさらに上昇することなく、適正といえる水準だった事例もありました。またTARでは属性ごとのインプレッション、リーチ、フリークエンシーが分かりますが、デジタルの出稿があったことでリーチの伸長に成功した事例もありました。興味深いのがインプレッションの構成割合で、99%がテレビ、1%がデジタルだったのですが、そのインプレッションの影響を30、40代の属性で見ると人口の40%にリーチしたうちの10%はデジタル単体でカバーしていました。1%のインプレッションで10%のユニークオーディエンスを獲得できたことに、デジタルの有効性をあらためて実感しました。

図表5:ターゲットリーチ施策のイメージ

図表6:属性ごとのトータル広告視聴率(レポートのイメージ)

統合リーチの実態が分かるからこそメディアの活用法や知見が広がる

 統合リーチが分かることによって人口に対してどれだけカバーできたかに注目するお客さまが増えています。その割合が高ければ、人口に対するカバレッジが取れているのでコミュニケーションとしては成功ではありますが、目標の数値に届かなかった場合、媒体の選定の見直しといった課題も明らかとなります。またデジタルキャンペーンにおいてインクリメンタルリーチを見たいというリクエストの広告主が多かったのでテレビ&デジタルの世界でも同様にインクリメンタルリーチの確認をしたい広告主が多いだろうと予測していました。しかしテレビとデジタルの両方に出稿する場合、テレビで認知、デジタルでECサイトなどへ誘導するといったメディアごとに役割を分ける考え方が多く、プランニングとしてテレビとデジタルの重複割合の高さを重視するケースもありました。このようなさまざまな事例から推測できたポイントは、テレビで大きくリーチを獲得できる一方でM/F3の属性にリーチとフリークエンシーが偏るので、テレビではカバーできないターゲットをデジタルで補完していくということ。そして、どのデジタル媒体が目的のターゲット属性のカバレッジを広げられるのかをTARとDARを通して実態を把握し、統合マーケティングの成功のパターンを見つけてネクストアクションにつなげられると考えています。
《お問い合わせ》
ニールセン デジタル 株式会社
担当:大澤 暢也
TEL:03-6837-6500
https://www.netratings.co.jp/contacts/contact/index.html
その月のCM業界の動きをデータとともに紹介する専門誌です。