広告主インタビュー 株式会社 毎日新聞社
コミュニケーター・カンパニーとして日常に潜む声を伝える
「磨き上げた感受性で社会課題に気付き、言葉で伝えることで社会の分断を防ぎたい」。新聞協会賞最多の受賞歴を誇り、昨年創刊150年を迎えた毎日新聞社。PR部門の指揮を執る千代﨑聖史氏はこう語るとともに、のんさん起用のCM展開は「チャレンジだった」と振り返った。
(取材:2023年1月12日)
(取材:2023年1月12日)
【 CM INDEX 2023年2月号に掲載された記事をご紹介します。】
インタビュイー
千代﨑聖史氏
株式会社 毎日新聞社
カスタマーリレーション本部
本部長 兼デジタル編集本部
株式会社 毎日新聞社
カスタマーリレーション本部
本部長 兼デジタル編集本部
「聞こえない声」篇(2021年10月4日オンエア開始)
「社会の日常に潜む小さな声にこそ伝えるべきことがある」といったナレーションとともに、ヤングケアラーの少年や視覚障害を持った女性などが「気付いて」と訴える姿が次々と映される。そして児童虐待や子どもの貧困といった社会課題を取り上げた毎日新聞の記事がインサートされ、「社会をつなぐ、言葉でつむぐ」のコピーと人々が助け合う様子を描いた。
「社会の日常に潜む小さな声にこそ伝えるべきことがある」といったナレーションとともに、ヤングケアラーの少年や視覚障害を持った女性などが「気付いて」と訴える姿が次々と映される。そして児童虐待や子どもの貧困といった社会課題を取り上げた毎日新聞の記事がインサートされ、「社会をつなぐ、言葉でつむぐ」のコピーと人々が助け合う様子を描いた。
個性と存在価値を打ち出し、報道だけではない社会への貢献を
— 新聞業界の変革を目指した取り組みについて
昨年2月、ロシアがウクライナに軍事侵攻した約20日後に、避難民支援のためのオンラインイベントを開催しました。新聞社として現地で起きている事実を正確に伝えることが第一の役割であることはもちろんですが、生活が困難になった方々が大勢いらっしゃる状況で毎日新聞の役割はそれだけじゃないだろうと。国際報道担当者に持ち場から出てもらい、自分たちにも何かできることはないかと考えていただくイベントを開催し、チケット代の収益は全額寄付いたしました。
このような寄付イベントは昨年、市場が大火の被害を受けた北九州市でも行いました。同市は毎日新聞がシェア1位で“地元の全国紙です”と言わせていただいている場所です。地域の一大事を前に、報道だけでなく、“人と人をつなぐ”行動が求められているとあらためて実感しました。
このような寄付イベントは昨年、市場が大火の被害を受けた北九州市でも行いました。同市は毎日新聞がシェア1位で“地元の全国紙です”と言わせていただいている場所です。地域の一大事を前に、報道だけでなく、“人と人をつなぐ”行動が求められているとあらためて実感しました。
— 「社会をつなぐ、言葉でつむぐ」をコピーとした創刊150周年に合わせたプロモーションの意図とは
当紙は現存する日刊紙として最も長い歴史を持ちますが、新聞がメディアの王様という時代は終わり、生活者の限られた時間を奪い合う時代です。そのような中で、当紙が社会にどのような役割を果たしているのか、その存在価値をあらためて打ち出す必要があると感じました。これまで我々は自らがメディアだからこそ、メディアに取り上げてもらう「宣伝」について真摯に考えてこなかったのではないかと思います。そこで宣伝の重要性を見直し、創刊150周年という節目に毎日新聞の個性を伝える企画を展開しました。
「社会をつなぐ、言葉でつむぐ」というキャッチフレーズは毎日新聞が大事にしてきた哲学や姿勢を表現したものです。当社は報道のグランプリと呼ばれる『新聞協会賞』を34回と最多受賞していますが、これは時代を切り取る力、つまり社会に潜む問題や課題に気付く感受性が優れていることを評価いただけたのだと感じています。また社員一人ひとりのまなざしを大事にする社風もあります。本コピーはこういった我々の個性を社内で議論した上で、クリエイティブディレクターの田中淳一さんとともに導き出した言葉です。毎日新聞という存在を社外へアピールするだけでなく、社員が自らの哲学や姿勢を意識するインナーブランディングにも寄与できたのではないでしょうか。毎日新聞がどのような会社、メディアなのかを社員一人ひとりが自分の言葉で語ることができる組織でありたいですね。
「社会をつなぐ、言葉でつむぐ」というキャッチフレーズは毎日新聞が大事にしてきた哲学や姿勢を表現したものです。当社は報道のグランプリと呼ばれる『新聞協会賞』を34回と最多受賞していますが、これは時代を切り取る力、つまり社会に潜む問題や課題に気付く感受性が優れていることを評価いただけたのだと感じています。また社員一人ひとりのまなざしを大事にする社風もあります。本コピーはこういった我々の個性を社内で議論した上で、クリエイティブディレクターの田中淳一さんとともに導き出した言葉です。毎日新聞という存在を社外へアピールするだけでなく、社員が自らの哲学や姿勢を意識するインナーブランディングにも寄与できたのではないでしょうか。毎日新聞がどのような会社、メディアなのかを社員一人ひとりが自分の言葉で語ることができる組織でありたいですね。
— 社会問題にフォーカスしたCMなどを展開されました。各施策の狙いについてお聞かせください
「聞こえない声」篇は、日本で学ぶ権利が閉ざされていた外国籍の子どもたちの問題を取り上げ、2020年に新聞協会賞を受賞した報道や、家事や家族の世話を日常的に子どもが行うヤングケアラーについての報道、そして国内で唯一の点字新聞で、視覚障害者と社会の架け橋として100年続いている『点字毎日』など、社会課題を先んじて取り上げてきた当紙の報道姿勢を象徴するコンテンツを選び、映像とともに表現しました。CMは『2022 62nd ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS』のフィルム部門 Aカテゴリー ACCファイナリスト、また『JAA広告賞 消費者が選んだ広告コンクール』でもメダリストとなりました。
さらにメッセージをより訴求力のある方に伝えていただきたいと考えて制作したのが、のんさんを起用したCMです。真剣に「毎日新聞とは何者か」に向き合い、その哲学を伝える内容ですので、出演いただくのはチャレンジだと思っていましたが、世代を問わず好感度が高く表現力に優れ、当社の企業姿勢とイメージが合うのんさんしかいないと。その思いを伝える手紙をお送りし、ご快諾いただきました。撮影時にはCMのコンセプトや我々の思いを深く理解した上で演じる彼女の姿に、心を打たれました。
またファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正さんや京都大学iPS細胞研究所名誉所長の山中伸弥さん、作家の五木寛之さんといった多様な分野の方々にご登場いただき、当紙について忖度なく語っていただくオンライントークセッション『Discover Mainichi Week 2022』や、博報堂さんが開発した『AIラッパーシステム』を活用し、新聞を読む機会が少ないZ世代に向けた動画コンテンツを展開しました。
さらにメッセージをより訴求力のある方に伝えていただきたいと考えて制作したのが、のんさんを起用したCMです。真剣に「毎日新聞とは何者か」に向き合い、その哲学を伝える内容ですので、出演いただくのはチャレンジだと思っていましたが、世代を問わず好感度が高く表現力に優れ、当社の企業姿勢とイメージが合うのんさんしかいないと。その思いを伝える手紙をお送りし、ご快諾いただきました。撮影時にはCMのコンセプトや我々の思いを深く理解した上で演じる彼女の姿に、心を打たれました。
またファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正さんや京都大学iPS細胞研究所名誉所長の山中伸弥さん、作家の五木寛之さんといった多様な分野の方々にご登場いただき、当紙について忖度なく語っていただくオンライントークセッション『Discover Mainichi Week 2022』や、博報堂さんが開発した『AIラッパーシステム』を活用し、新聞を読む機会が少ないZ世代に向けた動画コンテンツを展開しました。
記者一人ひとりの考えや価値観を感じてもらうために
個性の発信という面では、ポッドキャストで記者が取材現場で感じたことなどを語る音声番組を公開しています。これまで読者は記事を通してしか記者を知ることができませんでしたが、記者一人ひとりの考えや価値観を肉声で感じていただき、お客さまとの関係性が密接になることで、ブランディングにもつながると考えています。
毎日新聞は創刊150周年を機に「個を見つめ、世の中に伝え、社会をつなぐ コミュニケーター・カンパニーへ」というビジョンを発表しました。これは日常に潜む課題や問題を拾い上げ、誰かの行動変容につながることを願いながら世の中に提示し、社会の分断をつなぎとめていくという我々の決意を表しています。今後も報道という形にとらわれず、社会をつなぐ役割を果たしていきたいと考えています。
毎日新聞は創刊150周年を機に「個を見つめ、世の中に伝え、社会をつなぐ コミュニケーター・カンパニーへ」というビジョンを発表しました。これは日常に潜む課題や問題を拾い上げ、誰かの行動変容につながることを願いながら世の中に提示し、社会の分断をつなぎとめていくという我々の決意を表しています。今後も報道という形にとらわれず、社会をつなぐ役割を果たしていきたいと考えています。
その月のCM業界の動きをデータとともに紹介する専門誌です。