〈CM総研インサイト〉 ヒットCMと音楽活用の変遷 ー 音楽は映像を際立たせる役割からCM表現の主軸へ ー
テレビCMの黎明期から今日まで、音楽を活用した広告表現は多用され時代を象徴する数々のCMが世に送り出された。
30年以上にわたる月例CM好感度調査より、ヒットCMと音楽の活用法の変遷を探る。
30年以上にわたる月例CM好感度調査より、ヒットCMと音楽の活用法の変遷を探る。
【 CM INDEX 2022年9月号に掲載された記事をご紹介します。】
テレビCMの黎明期より、音楽は視聴者を振り向かせ、CMを印象づける手段として活用されてきた。月例CM好感度調査がスタートした1989年(平成元年)を振り返ると、「♪24時間戦えますか」というCMソングで好景気を象徴的に描いた三共『リゲイン』や、社交ダンス教室で「♪スコーン スコーン」という講師の掛け声で生徒がステップを踏むコイケヤ『スコーン』など、耳に残るフレーズで人々の心を捉えた事例が相次いだ。また山下達郎の『クリスマス・イブ』をバックに牧瀬里穂が恋人を新幹線の改札口で待つ姿を描くJR東海『クリスマス・エクスプレス』、佐藤竹善らが歌う『I feel Coke ’89』をBGMに人々の日常を爽やかに映す日本コカ・コーラ『コカ・コーラ』などのタイアップ曲が話題となった。
1990年代は一色紗英出演の大塚製薬『ポカリスエット』で使用された織田哲郎の『いつまでも変わらぬ愛を』やZARDの『揺れる想い』、JR東日本『JRskiski』のZOO『Choo Choo TRAIN』、スティーヴィー・ワンダーが書き下ろしたキリンビバレッジ『ファイア』の『TO FEEL THE FIRE』などのタイアップ曲が音楽チャートをにぎわせたほか、真心ブラザーズが商品名を歌い込むCMソングで展開したサントリー『モルツ』も人気を博した。
1990年代は一色紗英出演の大塚製薬『ポカリスエット』で使用された織田哲郎の『いつまでも変わらぬ愛を』やZARDの『揺れる想い』、JR東日本『JRskiski』のZOO『Choo Choo TRAIN』、スティーヴィー・ワンダーが書き下ろしたキリンビバレッジ『ファイア』の『TO FEEL THE FIRE』などのタイアップ曲が音楽チャートをにぎわせたほか、真心ブラザーズが商品名を歌い込むCMソングで展開したサントリー『モルツ』も人気を博した。
「音楽・サウンド」のチェック率は3割弱
ヒットCMほど割合が高い
2001年から20年間(当年4月度〜翌年3月度)のCM好感度に対するCM好感要因「音楽・サウンド」の割合の推移を、全体と作品別CM好感度上位100作品で比較したのが図表1だ。全体の割合を見ると2001年度の17.4%から直近では28.7%と大幅に伸びており、増減はあるもののアップトレンドだといえる。CM好感度トップ100作品での割合は全体に比べて大半の年度で上回り、2009年度に最高値を記録。その後、減少するも2014年度を境に右肩上がりに転じ、全体の割合との差を広げていることから、近年は音楽を主軸としたCMがヒットする傾向が見て取れる。
新曲タイアップから既存曲、オリジナルへ
ダンスと音楽を掛け合わせたCMも好調
以下、各年度のヒットCMを確認していく。2001年度の作品別CM好感度トップ10の顔ぶれのうち(図表2)、「音楽・サウンド」の割合が最も高いのはマンダム『ギャツビー』だった。本木雅弘ら男性3人のカラフルに染め上げられたモヒカンの髪が本木の歌う『人生いろいろ』に合わせて動くコミカルな内容だ。サッポロ『黒ラベル』は山﨑努と豊川悦司が金魚すくいで張り合う姿を映した当時最先端のハイスピードカメラによる映像に、ロック調のギター音とシャウトを重ねた表現で注目を集めた。
音楽を活用したCMが最も目立った2009年度は、SMAP出演の『SoftBank』がCM好感度1位に輝いた。Grand Funk Railroadの『ロコモーション』をBGMに、彼らがダンスをしながら人々を引き連れていく様子をワンカットで映す内容で、初回のオンエアを民放各局で一斉に行ったことも話題となった。商品を使用した岩尾望が木村拓哉に変身する『ギャツビー』には『Can’t Give You Anything』の替え歌が使用されるなど、往年の洋楽ヒット曲がCMを彩った。またアヒルとネコのキャラクターが歌い踊るアフラック『新EVER』、明石家さんまが「♪幸せってなんだっけ」と歌う過去の名作CMをリメイクしたキッコーマン『特選丸大豆しょうゆ』など、オリジナル楽曲を使用したCMも多かった。
2014年度は五月みどりらが歌い踊る大日本除虫菊『虫コナーズ』や、The Heavy『Same Ol’』をBGMに小栗旬を主人公に桃太郎を映画さながらの壮大なスケールで描くサントリー食品インターナショナル『ペプシネックス』のCMが「音楽・サウンド」で高い評価を獲得。CM好感度の上位には『SoftBank』の「白戸家」シリーズや全国都道府県及び全指定都市『ロト7』などクラシックの名曲をBGMとして展開する事例が見受けられた。
音楽を活用したCMが最も目立った2009年度は、SMAP出演の『SoftBank』がCM好感度1位に輝いた。Grand Funk Railroadの『ロコモーション』をBGMに、彼らがダンスをしながら人々を引き連れていく様子をワンカットで映す内容で、初回のオンエアを民放各局で一斉に行ったことも話題となった。商品を使用した岩尾望が木村拓哉に変身する『ギャツビー』には『Can’t Give You Anything』の替え歌が使用されるなど、往年の洋楽ヒット曲がCMを彩った。またアヒルとネコのキャラクターが歌い踊るアフラック『新EVER』、明石家さんまが「♪幸せってなんだっけ」と歌う過去の名作CMをリメイクしたキッコーマン『特選丸大豆しょうゆ』など、オリジナル楽曲を使用したCMも多かった。
2014年度は五月みどりらが歌い踊る大日本除虫菊『虫コナーズ』や、The Heavy『Same Ol’』をBGMに小栗旬を主人公に桃太郎を映画さながらの壮大なスケールで描くサントリー食品インターナショナル『ペプシネックス』のCMが「音楽・サウンド」で高い評価を獲得。CM好感度の上位には『SoftBank』の「白戸家」シリーズや全国都道府県及び全指定都市『ロト7』などクラシックの名曲をBGMとして展開する事例が見受けられた。
音楽を軸としたCMのヒットが続く
耳に訴える表現が人々の心を捉える
2021年度はCMソングが特徴的な日清食品のCMが並んだ(図表3)。『カップヌードル PRO 高たんぱく&低糖質』のCMは眉村ちあきの『顔ドン』の替え歌と、同曲のMVを手掛けた“はじめまして松尾です”氏によるアニメで展開。『カップヌードル 辛麺』は外国人男性ふたりがアニメーションダンスを披露するCM、『これ絶対うまいやつ!』はチョコレートプラネットが自身の持ちネタをモチーフに商品名を歌い踊るCMだ。浜田雅功が『スーダラ節』のメロディーに乗せて「♪出前がスイスイスイ〜」と歌う『出前館』も好評価を得た。また“キウイブラザーズ”が歌い踊る『ゼスプリ キウイフルーツ』、CMクリエイターの篠原誠氏が作詞を手掛けた和ぬかの『進め! そっちだ!』を使用したKDDI『au』などのCMも快走した。
映像やストーリーに華を添えるだけでなく、ダンスとの組み合わせや既存の名曲の使用など、音楽を表現の核としたCMのヒットが近年も続いている。マルチスクリーンでのメディア接触が中心となる中、CM制作において耳に訴える音楽の重要性は今後もますます高まりそうだ。
映像やストーリーに華を添えるだけでなく、ダンスとの組み合わせや既存の名曲の使用など、音楽を表現の核としたCMのヒットが近年も続いている。マルチスクリーンでのメディア接触が中心となる中、CM制作において耳に訴える音楽の重要性は今後もますます高まりそうだ。
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ご希望のテーマに合わせたレポートをご提供いたします。さまざまな角度からの検証が可能ですので、ぜひお問い合わせください。
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