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広告主インタビュー アイフル株式会社


良質なクリエイティブがブランド価値を作る

アイフル株式会社は大地真央、今野浩喜が出演する「凜とした女将」シリーズのCMを2018年より展開し、2021年度の企業別CM好感度の獲得効率では1位に輝いた。CMの狙いや役割、シリーズCMが長く愛されるための工夫点などを中心に、阿部育生氏にお話をうかがった。
(収録:2022年4月21日)
【 CM INDEX 2022年6月号に掲載された記事をご紹介します。】

インタビュイー
阿部育生氏
アイフル株式会社
宣伝部 部長
「女将・和尚」篇(2021年11月1日オンエア開始)
大地真央が老舗料亭の女将、今野浩喜が板前を演じる「凛とした女将」シリーズの第15弾。大地が寺の和尚として登場し、今野ら大勢の男女を前に説法をする内容で、「あんた、そこに愛はあるんか」「もしこの世から愛がなくなってしもうたら、あ行は“う”と“え”と“お”だけになってしまう」などと語るストーリー。「愛がいちばん。」のコピーとおなじみのCMソングで締めくくった。今年5月からは社会人向けの現代文講師に扮した大地が今野らに講義をするCMを放送している。

長期的にシリーズCMを展開することでお客さまからの第一想起を目指す

— 「凛とした女将」シリーズの制作意図、「愛がいちばん。」のコピーに込めた思いについてお教え願います
 多くの企業がカードローンなどの個人向け金融サービスを展開していますが、お客さまにとって各社のサービスに大きな差異はありません。CM表現も同様で、数年前までは人気タレントの方々が「早くお金を貸せる」ことを呼びかけるものが大半だったように感じます。こうしたメッセージはともすると偽善的に映る可能性もありますし、新CMシリーズの立ち上げに当たってはサービス内容の訴求よりも、企業名の認知やイメージ向上に軸足を置くべきだと考えました。そこでCMを通して当社への信頼感や安心感の醸成を目指すという考えのもと、クリエイティブディレクターの山崎隆明さんにご相談させていただいた結果、「愛がいちばん。」をコピーに展開する「凛とした女将」シリーズが誕生しました。当社が提供するサービスの根幹に「お客さまへの愛」があることを表現したもので、同時に「“アイ”フルが業界で“いちばん”になる」といった志も込めております。
 2018年に本シリーズを開始するまでは数年ごとにCMキャラクターやコピーを変更することが多く、企業イメージが積み上がらないことが大きな課題でした。購買行動やサービスの選択時において、CMによるコピーの刷り込み効果は小さなものではありません。当社の広告活動ではお客さまから第一想起されることを重視しておりますので、大地真央さんたちに何十年も出演いただけるかは分かりませんが、「愛がいちばん。」のコピーは今後も使い続けていくつもりです。
 もうひとつ大切にしているのが「そこに愛はあるんか?」のセリフで、お客さまに親しまれているのと同様に、当社の社員にも深く浸透しております。会議の席でもよく口にしますし、採用サイトでは「ここに愛はあるんや!」と少しアレンジした言葉を使用しています。このほか何作かのCMには社員がエキストラのような形で出演したり、新入社員の代表者がCMで大地さんの着用された衣装を着て入社式に出席したりと、社員のエンゲージメント向上にも CMが寄与していると感じます。
— 2021年度の企業別CM好感度 獲得効率で1位となりました。好調の理由をどのようにお考えですか
 山崎さんをはじめクリエイターの方々には全幅の信頼を置いていますので、CMの完成度を上げるべくあえて私たちからはクリエイティブに口を出さないよう心掛けています。当社のCMが支持を頂戴しているのは制作チームに加え、やはり出演者のおふたりの存在が大きいですね。大地さんには格闘家、和尚、現代文講師といった個性的な役柄を名バイプレイヤーである今野浩喜さんとともに演じていただいています。常に企画を深く理解された上で撮影に臨まれ、現場スタッフと意見交換をしたり、アドリブを利かせてくださったりと、その真摯な姿勢に頭が下がるばかりです。一連のCMはユーモラスなストーリーに注目いただくことが多いのですが、面白さの追求だけでなく、大地さんを美しく映すことも妥協できませんので、洗練された世界観の中でおふたりの掛け合いを楽しんでいただけるよう、どの作品も試行錯誤を繰り返しながら制作しています。
 メディア活用の面ではテレビCMを補完する目的でYouTubeやTwitter、TikTok、TVerなどでの露出にも注力しています。CMのローンチに合わせた予告ツイートやキャンペーンの展開など、テレビでの視聴と合わせた接触による相乗効果を狙うことが多いですね。短期的な成果を上げるのは難しいですが、さまざまな試みを続け長期的に最適化を図っていければと感じています。
  SNSの反響は事前に予測できないものが多く、きゃりーぱみゅぱみゅさんら著名人の方が当社のCMについてつぶやいてくださることもありますし、先日はバラエティー番組でヒコロヒーさんが当社のCMについてお話された直後に偶然 「女将・和尚」篇が放送され、Twitterのトレンドにまでなったようです(笑)。
— 貴社にとってのCMの役割、およびシリーズCMが長く愛されるために大切にされている考え方とは
 当社では主力サービスとしてカードローンをご提供しているほか、グループ企業を含めますとお客さまの多様なニーズにお応えする金融サービスや決済手段を展開しております。かつて業界全体の社会的イメージが低下した時代がありましたので、こうした幅広い金融サービスを提供することで、お客さまに少しでも良い生活、良い人生を送っていただきたいという当社の思いを生活者の皆さまに理解いただくにはブランドイメージの引き上げが欠かせません。その意味で、私たち宣伝部のミッションは企業イメージの向上であり、当社事業におけるCMの役割はブランディングだと捉えています。
 本シリーズは今年で5年目となりますので、CMの鮮度を保つために過去の作品に似た構造になることを避け、常に驚きや意外性のある展開を意識しています。とはいえ人間の“飽き”をコントロールすることは不可能ですので、CMが長く愛されるには良質なクリエイティブを作り続けるしかないのではないでしょうか。ブランディングに必要なのは量よりも質ですので、予算があれば出稿を増やすのではなくクオリティー向上に使いたい。クリエイティブの質には自信を持っていますので、これからも多くのお客さまに愛され、企業ブランドの価値を高める良質なCMを展開していきたいと思います。
その月のCM業界の動きをデータとともに紹介する専門誌です。