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BRAND OF THE YEAR 2021・本年度のCM概況解説


CM総合研究所 代表
関根 心太郎

本年度の『BRAND OF THE YEAR』は会場、オンライン配信のハイブリッドで開催。CM好感度ランキングやCM動向レポート、広告主へのインタビュー、クリエイターによるトークセッションを通して1年間のCMシーンを総括し、今後の広告コミュニケーションの在り方を探りました。

CMに求められる“楽しませる”という視点

 2021年のCMシーンは外出自粛による「おうち時間の充実」や「巣ごもり需要」を狙った商品・サービスのCMが次々にオンエアされ、視聴者の好感を集めました。CM総合研究所では、年間のCM好感度調査で優れた結果を残したブランドを対象に、業績に関するアンケートを行っており、本年度の有効回答数144件のうち「目標値・前年実績を上回った」との回答数は130件と9割以上を占め、受賞数、受賞率ともに例年を上回りました。また「CMを初めてオンエアする企業」が増加しており、本年度は観測史上最多の331社を数えました。加えてNetflixなどの定額制動画配信サービスのCMが出稿量を増加させたことからも分かる通り、デジタルを主戦場とするブランドがデジタル広告では達成できない「瞬時に広く認知を獲得する」というテレビの特性を積極的に活用する傾向が見られ、テレビCMの価値や影響力が見直されているといえます。

好感は行動の前提
“売れる”と“好き”は両立する

 テレビCMには情報を瞬時に広く伝えるだけでなく、ながら視聴下でも生活者の心を動かして「好き」を生み出す力があります。「好き」という心の動きは、あらゆる社会活動の原動力となり、時代の空気を作る力になる。CM総合研究所は「好感は行動の前提である」という理念に基づき、32年にわたって生活者一人ひとりの「好き」を観測し続けてまいりました。
 その「好き」の中身がここ数年大きな変化を見せています。「CMを好きな理由」を回答するCM好感要因のチェック率は「出演者・キャラクター」が6割以上と圧倒的に高いことに変わりませんが、2位以下に注目すると2011年を境に「ユーモラス」と「商品にひかれた」が逆転し、2017年以降は年々その差が開いています。広告投資に対する説明責任や合理性が求められる中で、“視聴者を楽しませる”ことへの意識が薄れつつあったのではないでしょうか。
CM好感度に対するCM好感要因のチェック率の変遷

 テレビCMで“商品を売る”ことと“視聴者を楽しませる”ことを同時に達成するという難題をクリアしている企業の代表として、日清食品が挙げられます。発売50周年を迎えた『カップヌードル』ブランドをはじめ、『チキンラーメン』『どん兵衛』など、オンエアされたCMは軒並みCM好感度の上位にランクインしました。「ユーモラス」の項目では全企業中ナンバーワンに輝き、「商品にひかれた」の項目でも高水準をキープしています。
 またロングセラーブランドは若年層の取り込みが必須ですが、日清食品は“テレビ離れ”ともいわれる若者に的中するCMを意識的に展開し、「商品をためしてみたい」というトライアル意向も総合1位となりました。すべてのCMに見る者を“楽しませる工夫”を盛り込み、それが「日清食品らしさ」として生活者に伝わった結果といえるのではないでしょうか。
 情報を広く伝えるという意味でテレビの力は依然として圧倒的で、CMのヒットが高い確率で業績に貢献することは先ほど申し上げた通りです。一方、CMの持つ“人を楽しませる力”が十分に活用されているかというとそうとは言い切れませんが、“ユーモラス不足”というCMシーンの現状は広告活動を展開する上でひとつのチャンスともいえます。
 「売れるCM」と「好きになってもらえるCM」は両立します。人々を笑顔にしながら、同時に消費行動を促すCMが世にあふれることで、経済の活性化を加速させていく。CM総合研究所ではこれからも「好き」という心の動きを見つめ続け、ブランドを強くする広告コミュニケーションをお客さまと一緒に考えてまいります。
2021年度のテレビCMについてまとめたレポートをご用意しております。