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Creator Interview 眞鍋亮平氏(株式会社 電通)後編


深いエンゲージメントを生む広告を

2020年度のクリエイター・オブ・ザ・イヤーを受賞した眞鍋亮平氏。デジタル領域を中心に大塚製薬『ポカリスエット』やアシックスの広告を手掛けるほか、NewsPicks StudiosのChief Creative Officerも務めるなど幅広いフィールドで活躍している。デジタルとマスを掛け合わせたコミュニケーションや耐用年数の長い広告作りについてお話をうかがった。
(収録:2021年5月14日)
【 CM INDEX 2021年6月号に掲載された記事を2回に分けてご紹介します。(後編)】
— 中島セナさんを起用されたポカリスエットの新CM「でも君が見えた」篇も話題を集めています
 “集団とヒロイン”という昨年までの展開を一新し、次のフレームを考える中で、音楽はポカリスエットの広告資産だとあらためて気付きました。織田哲郎さんの『いつまでも変わらぬ愛を』やZARDの『揺れる想い』を聞くと、我々40代は一色紗英さんが出演していた1990年代のCMをすぐに思い出しますよね(笑)。耐用年数の長い広告ってこういうものだと思うんです。そこで“ヒロイン×音楽”というスタイルを現代風に進化させたのが今回のCMです。ADの正親篤さんと柳沢翔監督のディレクションによるスケール感のある美術セットや演出のもと、中島セナさん演じるヒロインが友達の元へ向かって校舎の中を疾走するというストーリーです。ヒロインが自分の道へと軽やかに進む姿を描きたい。たとえ逆風の吹くアゲインストな時代の中でも、ひとりひとりのパーソナルな思いに寄り添いたいというメッセージをファンタジックに表現しています。
 床が波打つ美術セットの仕掛けや、ふたり組のアーティスト「A_o」が歌うCMソングについても深く知ってもらいたいと考え、今回は特にPRに注力しました。映像関係者に向けたオンライン試写会をCMの公開前日に行うとともに、ビジュアルや情報を盛り込んだ映画パンフレットさながらのニュースリリースを配布してオンエア前から期待感を醸成したんですね。そして4月9日、ウェブ動画に続けて『ミュージックステーション』の枠内でCMを放送したところ、公開初日から話題を爆発させることができました。また当初伏せていたA_oの正体がBiSHのアイナ・ジ・エンドさんとROTH BART BARONの三船雅也さんであることをCM公開の約10日後にYouTubeの生配信で明かした結果、若い世代を中心に多くの反響をいただきました。
— 今後の展望、および広告を制作する上で大切にされている考え方をお聞かせください
 今回のクリエイター・オブ・ザ・イヤーの受賞はデジタルとマスをはじめ、リアルなイベントやビジネスの設計といった複数のコミュニケーションを掛け算した展開が世の中で効果を発揮したことから、これまでの地道な取り組みを含めて光を当てていただけたように感じています。昨年からChief Creative Officerを兼務しているNewsPicks Studiosでは番組や動画コンテンツの企画制作、NewSchoolの事業計画や講師としての活動、キャンパスやカフェの空間設計など、幅広いジャンルの仕事に挑戦しています。先日とあるウェビナーに参加した際、数人の登壇者の中で私の自己紹介が一番シンプルだったんですね(笑)。これからは自己紹介がもっとややこしい人間になれるよう、広告の領域を超えたフィールドへさらに積極的に踏み出していきたいと思っています。
 マスメディアはオワコンという声も耳にしますが、誰もが無料でアクセスできるテレビやラジオは社会の財産ですよね。ポカリスエットの広告が実証するように、マスとデジタルを掛け合わせてリーチとエンゲージメントを増幅すると、人々の共感はもちろん社会全体を勇気づけることもできますので、マスの可能性を今後もますます活用したいと考えます。
 また広告作りでは効率やコンバージョンも大切ですが、ブランドの本質を捉えた耐用年数の長いコンテンツを発信し続けることを大切にしています。中長期的にブランドの人格を設計しファンを増やしていくことは費用対効果が高いだけでなくやりがいを感じますので、これからもさまざまなクライアントと一緒に深いエンゲージメントを生むブランドコミュニケーションを仕掛けていきたいですね。
眞鍋亮平氏 電通 第5CRプランニング局 グループ・クリエーティブ・ディレクター
一橋大学社会学部卒。1997年電通入社。2014年からクリエーティブ・ディレクター。2020年よりNewsPicks StudiosのChief Creative Officerを兼務。主な仕事にYouTube「好きなことで、生きていく」、大塚製薬「ポカリNEO合唱」、ONE OK ROCK×Honda「#10969GVP」など。カンヌライオンズゴールド、アドフェストグランプリなど国内外の受賞多数
その月のCM業界の動きをデータとともに紹介する専門誌です。