BRAND OF THE YEAR 2020・インタビュー サイボウズ株式会社
サイボウズ株式会社は「がんばるな、ニッポン。」をコピーに展開したCMが話題を集め、2020年7月度のCM好感度調査にて自己最高スコアを記録した。十数年にわたり、日本人の働き方について問題提起を続けている同社コーポレートブランディング部の大槻幸夫氏に、CM展開の狙いについてお話をうかがった。
(収録:2020年11月19日)
(収録:2020年11月19日)
【 CM INDEX 2021年1月号に掲載された記事をご紹介します。】
インタビュイー
大槻幸夫氏 コーポレートブランディング部 部長
大学卒業後、危機管理事業を展開するレスキューナウを共同で創業。2005年サイボウズ 入社。以後マーケティングに従事し、オウンドメディア「サイボウズ式」の初代編集長などを務め2015年より現職。
大学卒業後、危機管理事業を展開するレスキューナウを共同で創業。2005年サイボウズ 入社。以後マーケティングに従事し、オウンドメディア「サイボウズ式」の初代編集長などを務め2015年より現職。
サイボウズ
2020年度の代表的なCM
「がんばるな、ニッポン。」篇
緊急事態宣言解除後の品川駅の通勤風景と「経営者のみなさまへ」という呼びかけに始まり、「通勤をがんばらせることは、必要ですか?」と問いかける。続いてサイボウズの閑散としたオフィスを映し、「がんばるな、ニッポン。」のコピーとともにテレワークによる働き方を提案する内容で、7月6日に放送を開始した。3月6日の日本経済新聞に掲載した全面広告も話題を呼んだ。
緊急事態宣言解除後の品川駅の通勤風景と「経営者のみなさまへ」という呼びかけに始まり、「通勤をがんばらせることは、必要ですか?」と問いかける。続いてサイボウズの閑散としたオフィスを映し、「がんばるな、ニッポン。」のコピーとともにテレワークによる働き方を提案する内容で、7月6日に放送を開始した。3月6日の日本経済新聞に掲載した全面広告も話題を呼んだ。
インパクトのあるメッセージを通して
テレワークの推進を提言
—「がんばるな、ニッポン。」をコピーとした広告展開についてお聞かせください
サイボウズでは「チームワークあふれる社会を創る」という理念のもと、 『kintone』などの情報共有ツールの開発や提供を行っています。これらをより多くの方に利用いただくには、製品のPRだけでなく私たちがどのようなパーパスのもと事業を展開しているかを伝えていくことが重要だと考え、オウンドメディアの運営やコーポレートメッセージを伝えるウェブ動画など、さまざまなメディアを通して企業理念や働き方への提言を発信してきました。
「がんばるな、ニッポン。」というフレーズは、「無駄な頑張りをなくそう」といったテーマのもとチーム内で広告の企画案を出し合う中、「オリンピックイヤーだから『がんばれ、ニッポン。』をひっくり返しては」という発想から生まれたものです。強いメッセージのため社内では賛否の声もありましたが、広告の意図を丁寧に説明し議論を重ねた結果、このフレーズでいこうと意見がまとまりました。ですが深刻化するコロナ禍を鑑み、この企画を一度見直すこととなったんです。あらためて人々の働き方を見て気付いたのは、テレワークできるにもかかわらず出社させられている人が多いということ。そこで社長の青野を含めて話し合い、テレワーク推進の広告を今こそ世に出すべきだという思いに至り、「がんばるな、ニッポン。」というフレーズを使った全面広告を2020年3月に日本経済新聞に掲出しました。掲載日までは心配でしたが、おおむねポジティブな反応をいただくことができました。
その後は一時的にテレワークの導入が進みましたが、緊急事態宣言が解除されると一律出社に戻す企業が増えてきたんですね。そこで新聞広告で手応えを感じたこともあり、テレビCMを制作しました。引き続き「がんばるな、ニッポン。」をコピーに、マスク姿の人々が行き交う通勤風景や閑散とした当社のオフィスを映す内容です。実際に社員がほぼいない状況でしたので、当社の働き方の実態を感じていただければと思いました。感染対策をしながらの撮影には制約もあり、「今できることを」と無我夢中でCM制作に挑戦したのですが、情勢が刻々と変わる中でタイムリーな発信ができたことは有意義だったと感じています。
「がんばるな、ニッポン。」というフレーズは、「無駄な頑張りをなくそう」といったテーマのもとチーム内で広告の企画案を出し合う中、「オリンピックイヤーだから『がんばれ、ニッポン。』をひっくり返しては」という発想から生まれたものです。強いメッセージのため社内では賛否の声もありましたが、広告の意図を丁寧に説明し議論を重ねた結果、このフレーズでいこうと意見がまとまりました。ですが深刻化するコロナ禍を鑑み、この企画を一度見直すこととなったんです。あらためて人々の働き方を見て気付いたのは、テレワークできるにもかかわらず出社させられている人が多いということ。そこで社長の青野を含めて話し合い、テレワーク推進の広告を今こそ世に出すべきだという思いに至り、「がんばるな、ニッポン。」というフレーズを使った全面広告を2020年3月に日本経済新聞に掲出しました。掲載日までは心配でしたが、おおむねポジティブな反応をいただくことができました。
その後は一時的にテレワークの導入が進みましたが、緊急事態宣言が解除されると一律出社に戻す企業が増えてきたんですね。そこで新聞広告で手応えを感じたこともあり、テレビCMを制作しました。引き続き「がんばるな、ニッポン。」をコピーに、マスク姿の人々が行き交う通勤風景や閑散とした当社のオフィスを映す内容です。実際に社員がほぼいない状況でしたので、当社の働き方の実態を感じていただければと思いました。感染対策をしながらの撮影には制約もあり、「今できることを」と無我夢中でCM制作に挑戦したのですが、情勢が刻々と変わる中でタイムリーな発信ができたことは有意義だったと感じています。
— CMへの反響はいかがでしたか
今回のCMには「ほっとした」「気持ちが救われた」という反応を多数いただきました。かつて「24時間戦えますか」というCMが一世を風靡しましたが、最近はようやく“がんばらない”ことが受け入れられ、個人の働き方が少しずつ尊重されはじめていると感じます。私たちの広告がこのような風潮を後押しできていたらいいですね。
社員の反応では、大企業から中途入社した社員からの「前職とは異なり、企画のプロセスから内容を共有できたので意義がよく分かり応援できる」というコメントが印象的でした。そのほか「テレワークが進んだら、安心して職場に通うことができる」といった看護師の方の声もうかがうなど、当社の姿勢を社内外に広く知っていただけたことを実感しています。幸いなことにCM放送後は企業の認知度が大幅に上昇しました。これは今年の広告だけの成果ではなく、情報発信の蓄積があったからこそ「サイボウズがまた面白いことをやっている」と多くの方に応援いただけたのではないでしょうか。今後はコーポレートメッセージとの相乗効果を図りつつ、プロダクトの認知拡大にも継続して取り組んでいく予定です。
社員の反応では、大企業から中途入社した社員からの「前職とは異なり、企画のプロセスから内容を共有できたので意義がよく分かり応援できる」というコメントが印象的でした。そのほか「テレワークが進んだら、安心して職場に通うことができる」といった看護師の方の声もうかがうなど、当社の姿勢を社内外に広く知っていただけたことを実感しています。幸いなことにCM放送後は企業の認知度が大幅に上昇しました。これは今年の広告だけの成果ではなく、情報発信の蓄積があったからこそ「サイボウズがまた面白いことをやっている」と多くの方に応援いただけたのではないでしょうか。今後はコーポレートメッセージとの相乗効果を図りつつ、プロダクトの認知拡大にも継続して取り組んでいく予定です。
“毎日の行動”こそがブランディング
率直で誠実なスタンスを伝えていく
― 広告を作る上で大切にしていることとは
ブランディングとはブランド理念の浸透だと言う方も多いですが、私は“毎日の行動”こそがブランディングだと捉えています。一人ひとりの社員が自分の働き方について悩み、工夫しながら制度を変えていく。情報発信の際にはそういう個々の行動を編集して世の中に提示しているだけで、それ以上のことは何も言えません。今回の強いメッセージも実際にテレワークをしているからこそ、自信を持って世に出すことができました。SNSの時代ですので、行動の伴わない小手先のメッセージはすぐに見透かされます。「アホはいいけど、ウソはダメ」という青野の口癖が象徴しているように、これからも率直で誠実、公明正大というサイボウズのスタンスを広告を通して世の中に伝えていきたいですね。
サイボウズ『知名度アップ』CMデータ(商品別)
CM展開月数:3カ月/オンエア作品数:2作品/放送回数:556回/CM好感度:28.7P‰
関連データ
2020年度のテレビCMについてまとめたレポートをご用意しております。