電通CMクリエイター 見市沖のこれからのCMの話をしよう【鈴木晋太郎氏・前編】第2回/全2回
無限の引き出しから“役に立つ”CMをつくる
電通のCMクリエイター・見市沖氏がCM制作の最前線で活躍するクリエイターと、これからのCMのあり方を探る連載企画。第2回の対談相手は、深田恭子さんらが三姉妹を演じる『UQ』や橋本環奈さん出演の日清食品『カップヌードル』など数多くのヒットCMを手掛けてきた電通の鈴木晋太郎氏。前編では、さまざまなタイプのCMを制作する鈴木氏がCM作りで大切にしていることを中心にうかがった。(収録:10月8日)
【 CM INDEX 2020年12月号に掲載された記事を2回に分けてご紹介します。(第2回/全2回)】
— 企業の志や精神を尊重することが大切
見市:お互いにCDを務めることも増えてきたけれど、きっとそれぞれ企画の考え方も違うよね。俺の場合はCMの真ん中になる言葉から考えたり、タレントさんのまだ世の中に出ていない魅力は何だろうって考えたり。
鈴木:仕事によってバラバラですね。例えば『Spotify』はブランディングが世界で統一されていて、グローバルのクリエイティブがブランディングのトンマナやデザインの意図を説明してくれたんです。ローカライゼーションへの理解もあるので、日本での展開についてもディスカッションしながら進めています。なので、企画の作り方としては全体のトンマナを描いてから、コピーとストーリーを作るという順番でした。
見市:素敵なクライアントだね。
鈴木:そうなんです。音楽配信をメイン事業の付帯サービスとして展開する企業が多い中、Spotifyは音楽や音声コンテンツだけを扱っている。クライアントはそこに誇りを持っていて、次世代の音声プラットフォームを担っていくという意志を強く感じます。僕もひとりの音楽好きとしてその姿勢を尊敬しているので、音楽文化を愛するSpotifyの企業精神を大切にしながら広告を作っています。
見市:CMもサービス内容を押しつける表現ではなく、音楽の良さを伝えているよね。
鈴木:音楽を扱っている企業だからこそ、表現からクリエイティブな匂いがすることが大切だと思っているので、CMではセンスのあるトーンやウィットを意識しています。
鈴木:仕事によってバラバラですね。例えば『Spotify』はブランディングが世界で統一されていて、グローバルのクリエイティブがブランディングのトンマナやデザインの意図を説明してくれたんです。ローカライゼーションへの理解もあるので、日本での展開についてもディスカッションしながら進めています。なので、企画の作り方としては全体のトンマナを描いてから、コピーとストーリーを作るという順番でした。
見市:素敵なクライアントだね。
鈴木:そうなんです。音楽配信をメイン事業の付帯サービスとして展開する企業が多い中、Spotifyは音楽や音声コンテンツだけを扱っている。クライアントはそこに誇りを持っていて、次世代の音声プラットフォームを担っていくという意志を強く感じます。僕もひとりの音楽好きとしてその姿勢を尊敬しているので、音楽文化を愛するSpotifyの企業精神を大切にしながら広告を作っています。
見市:CMもサービス内容を押しつける表現ではなく、音楽の良さを伝えているよね。
鈴木:音楽を扱っている企業だからこそ、表現からクリエイティブな匂いがすることが大切だと思っているので、CMではセンスのあるトーンやウィットを意識しています。
— クライアントとの徹底的な議論から予想外の面白さを発見
見市:個人的に『U.F.O.』の広告がものすごく好きなんだけど、あのCMはどう? 定番ブランドの場合、どうしてもメジャー感を出さないとと考えてしまう。でもU.F.O.※はバーチャルYouTuberの輝夜月(かぐやるな)をはじめ、知る人ぞ知るというか局所的にファンがいるマニアックな素材で勝負しているよね。
鈴木:日清食品さんもディスカッションベースで企画を考えていくことが多いです。そうすると企画段階では想定していなかった面白さを発見できる。予想外の結果に到達できたりするんです。
見市:いろいろな人の考えが入り交じったクリエイティブだから、良い意味での混沌が生まれるんだろうね。CMを企画するフェーズにそういう作り方を取り込めているのは貴重なことかもしれない。
鈴木:あと、見た人がSNSで遊んだりいじったりと、自由に料理できる余白も意識しています。
見市:企画自体の懐の広さ、それが人気の理由なんだね。
鈴木:日清食品さんもディスカッションベースで企画を考えていくことが多いです。そうすると企画段階では想定していなかった面白さを発見できる。予想外の結果に到達できたりするんです。
見市:いろいろな人の考えが入り交じったクリエイティブだから、良い意味での混沌が生まれるんだろうね。CMを企画するフェーズにそういう作り方を取り込めているのは貴重なことかもしれない。
鈴木:あと、見た人がSNSで遊んだりいじったりと、自由に料理できる余白も意識しています。
見市:企画自体の懐の広さ、それが人気の理由なんだね。
※ 2019年3月に開始したCMでは輝夜月がCMソングに乗せてソースの濃さを訴求。そのほかゲームを思わせるフルCGで描かれた武田真治らがダンスを披露するCMや、コスプレイヤーのえなこを起用したCMも展開した。
— アイデアの引き出しの中から課題に応じて最適な案を提示
見市:これまでに手掛けたCMを振り返って「人から好かれる表現ができた」って手応えを感じた仕事があったら教えてもらえるかな。CM作りの本質が見えたというか。
鈴木:まだないかもしれないですね。
見市:本当に?
鈴木:自分がCDじゃない案件もあるので。
見市:これからなんだ。とはいえ、多くのCMを企画する中で、自分の筆が走りやすいとか、SNSで受けるだろうなっていう得意なゾーンはあるでしょう?
鈴木:自分はニッチなものが好きなので、世の中と合わないんですよ(笑)。だから一番筆が乗った企画が採用されることはまずないですね。慣れないながらもどうにか試行錯誤して作ったものの方が意外と褒められるんです。
見市:自分と世の中の温度差を客観的に見極める目線があるのはいいね。あと感心するのは、手掛けるCMがどれもまったく色が違うってこと。気を付けないと無意識のうちにトーンが似てくることもあると思うけれど。
鈴木:似たようなパターンになるのが嫌なんですよね。だから自分がよく作りそうな表現は意識的に避けるようにしています。篠原(誠)さんも割とアウトプットにバリエーションがある人なので、その影響もあるかもですね。
アイデアの引き出しを無限に持った上で、与えられた課題に応じて最適な案を提示できる方が職人らしくてかっこいい気がしています。その引き出しの中から、クライアントや視聴者、出演者などあらゆる立場の人にとって「役に立つ」CMを作っていきたいです。
鈴木:まだないかもしれないですね。
見市:本当に?
鈴木:自分がCDじゃない案件もあるので。
見市:これからなんだ。とはいえ、多くのCMを企画する中で、自分の筆が走りやすいとか、SNSで受けるだろうなっていう得意なゾーンはあるでしょう?
鈴木:自分はニッチなものが好きなので、世の中と合わないんですよ(笑)。だから一番筆が乗った企画が採用されることはまずないですね。慣れないながらもどうにか試行錯誤して作ったものの方が意外と褒められるんです。
見市:自分と世の中の温度差を客観的に見極める目線があるのはいいね。あと感心するのは、手掛けるCMがどれもまったく色が違うってこと。気を付けないと無意識のうちにトーンが似てくることもあると思うけれど。
鈴木:似たようなパターンになるのが嫌なんですよね。だから自分がよく作りそうな表現は意識的に避けるようにしています。篠原(誠)さんも割とアウトプットにバリエーションがある人なので、その影響もあるかもですね。
アイデアの引き出しを無限に持った上で、与えられた課題に応じて最適な案を提示できる方が職人らしくてかっこいい気がしています。その引き出しの中から、クライアントや視聴者、出演者などあらゆる立場の人にとって「役に立つ」CMを作っていきたいです。
鈴木晋太郎氏 株式会社 電通 CMプランナー/コピーライター
1981年生まれ。東京大学大学院工学系研究科を修了後、2007年電通入社。情報システム局、営業局を経て、30歳でCMプランナーに。主な仕事に日清食品『カップヌードル』、日清焼そばU.F.O.、花王アタックZERO、Spotify、UQモバイル、湖池屋プライドポテト、タウンワーク、SOYJOY。ACCゴールド、TCC賞、ギャラクシー賞など受賞多数。
見市沖氏 株式会社 電通 クリエーティブディレクター/コピーライター/CMプランナー
2006年電通入社。近作はタイムツリーはじめました、ポッキー、パズドラなど。TCC新人賞、ACC賞、国際PRゴールデンアワードなど受賞多数。「世界に愛されるブランドをひとつでも多く増やす」がモットー。
1981年生まれ。東京大学大学院工学系研究科を修了後、2007年電通入社。情報システム局、営業局を経て、30歳でCMプランナーに。主な仕事に日清食品『カップヌードル』、日清焼そばU.F.O.、花王アタックZERO、Spotify、UQモバイル、湖池屋プライドポテト、タウンワーク、SOYJOY。ACCゴールド、TCC賞、ギャラクシー賞など受賞多数。
見市沖氏 株式会社 電通 クリエーティブディレクター/コピーライター/CMプランナー
2006年電通入社。近作はタイムツリーはじめました、ポッキー、パズドラなど。TCC新人賞、ACC賞、国際PRゴールデンアワードなど受賞多数。「世界に愛されるブランドをひとつでも多く増やす」がモットー。
その月のCM業界の動きをデータとともに紹介する専門誌です。