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電通CMクリエイター 見市沖のこれからのCMの話をしよう【三浦崇宏氏・後編】第2回/全2回


クリエイティブの力で社会を変える

電通のCMクリエイター・見市沖氏がCM制作の最前線で活躍するクリエイターと、これからのCMのあり方を探る連載企画がスタート。第1回の対談相手は、「あらゆる社会の変化と挑戦にコミットすること」をミッションに掲げ、クリエイティビティを軸に企業をサポートするThe Breakthrough Company GOの三浦崇宏氏。後編ではブランドが愛されるためのCM作りや広告クリエイティブの可能性について語っていただいた。(収録:7月16日)
【 CM INDEX 2020年10月号に掲載された記事を2回に分けてご紹介します。(第2回/全2回)】
— 広告の仕事の醍醐味はアイデアの力で一発逆転できること
三浦:僕は広告の仕事を愛しているんです。あるとき、なんでこんなに好きなのか考えてみたのですが、一発逆転できるからだと思うんですね。
 例えば大手企業が広告予算に10億円を投じたコーヒーがあったとして、無名のメーカーが作った同じくらいおいしいコーヒーには1億円しか予算がないときに、コンサルだったらブランドを売却するとか別の戦い方を示すと思うんです。でも広告って一発逆転で勝てる可能性が意外とあるんですよ。予算や時間はもちろん、世の中の常識とか、さまざまな問題があって到底実現できないと思えてもアイデアの力でひっくり返すこともできる。それが広告クリエイターの仕事の醍醐味だと思います。
見市:僕も自分の好きな企業やブランドが人気者になるプロセスを作っていくのが好きなんです。世の中の人がまだ知らない価値を見つけて、広告を通して「この商品にはこんな良いところがあるよ」と伝える。無名だったブランドをクリエイティブの力でいきいきと輝かせることができる。それがたまらなく面白いですよね。
三浦:見市さんの仕事ってジャイアントキリングの要素があると思うんです。だから好きなんですよ。予算がなくても諦めないとか、出稿量だけで決めさせないぞっていう意思があるし、制約を軽々と超える強いアイデアがある。そういう知恵で勝負するような仕事をこれからもやっていきたいですね。
— 不安な時代だからこそクリエイティブの可能性を信じる
見市:今後取り組んでいきたいことはありますか。
三浦:広告の仕事の領域を広げていくことですね。今の広告の市場規模は7兆円ですが、それを10兆円にするきっかけにGOがなりたいと思っています。
 市場の領域を縦と横からなる面積に例えると、縦に伸ばすというのは現状の仕事の質を上げていくこと。例えば大手企業のCMを手掛けるだけの実力を持ったり、スタートアップと一緒に面白いCMを作ったりすることですね。一方、横に広げていくというのは広告のクリエイターが企業の人事をプロデュースしたり、広告会社がクライアントの商品企画や投資をしたりすること。僕らが注力しているのは主に後者で、今は戦略的に広告の領域を拡大しています。もちろん広告のクオリティーを高めることも欠かせないので、さまざまなジャンルで活躍する才能たちと切磋琢磨しながら、みんなで広告というフィールドを広げる活動を共創していきたいですね。
見市:以前からクリエイティブの価値を上げたいというお話をされていましたね。
三浦:そのためにもクリエイターを目指す人が増えてほしいし、クリエイターの給料を10倍にしたい。なぜなら、それが社会の成長につながると信じているから。クリエイティブディレクターの養成に特化した教育プログラム『The Creative Academy』※2を立ち上げたのも、社会をポジティブに変化させる専門家を増やすためです。我々は想像力やクリエイティブの力で新たな価値や未来へのビジョンを提示することができる。不安な時代ですが、広告に携わる人間は今まで以上にクリエイティブの可能性を信じ、社会と向き合うことが必要だと考えています。
※2. 古川裕也氏(電通)、辻愛沙子氏(arca)をはじめさまざまな領域で活躍するクリエイターが講師を務める。アカデミー全体で意見交換やアイデアの共創が生まれるコミュニティを目指すという。2020年8月から開講。
三浦崇宏氏 The Breakthrough Company GO 代表取締役 PR/CreativeDirector
2007年株式会社博報堂入社、マーケティング・PR・クリエイティブの3領域を経験、TBWA\HAKUHODOを経て2017年独立。Cannes Lions、PRアワードグランプリ、ACC賞など受賞多数。近著に『言語化力』(SBクリエイティブ)、『人脈なんてクソだ。』(ダイヤモンド社)。「表現をつくるのではなく、現象を起こすのが仕事」が信条。

見市沖氏 株式会社 電通 クリエーティブディレクター/コピーライター/CMプランナー
2006年電通入社。近作はタイムツリーはじめました、ポッキー、パズドラなど。TCC新人賞、ACC賞、国際PRゴールデンアワードなど受賞多数。「世界に愛されるブランドをひとつでも多く増やす」がモットー。
その月のCM業界の動きをデータとともに紹介する専門誌です。