電通CMクリエイター 見市沖のこれからのCMの話をしよう【三浦崇宏氏・前編】第3回/全3回
時代の空気を捉えたCMが共感を呼ぶ
電通のCMクリエイター・見市沖氏がCM制作の最前線で活躍するクリエイターと、これからのCMのあり方を探る連載企画がスタート。第1回の対談相手は、「あらゆる社会の変化と挑戦にコミットすること」をミッションに掲げ、クリエイティビティを軸に企業をサポートするThe Breakthrough Company GOの三浦崇宏氏。前編ではCMの役割や、コロナ禍において効果を発揮するCMについて語っていただいた。
(収録:7月16日)
(収録:7月16日)
【 CM INDEX 2020年9月号に掲載された記事を3回に分けてご紹介します。(第3回/全3回)】
—フェイクが嫌われる今、リアルとシンクロする表現が重要
見市:リモートワークのような新しい生活スタイルが浸透していくと、例えば満員電車で出勤するシーンは今を描いている感じがしないんですよね。世の中のリアルとCMのリアリティーがシンクロしているかどうか。これはCMを見てもらうために大切な要素だと思います。また、今で言えば人々が抱える不安な気持ちを深く理解した上でコミュニケーションすることも欠かせない。そのインサイトがないとどんなにきれいな言葉でも上滑りする気がします。
三浦:数年前から、時代の気分からずれた発言や、真実に見せかけたフェイクが猛烈に嫌われるようになりましたね。SNSによって裏側がすぐに暴露されるので、上っ面の物言いはバレてしまう。広告キャラクターを務めるタレントさんが本当に商品を好きなのかも意外と伝わってくるし。
見市:SNSには友達や家族といった近しい人間のリアルな言葉があふれているじゃないですか。すると相対的にテレビや広告から流れてくるものはフェイクに見えてしまう。こういう状況でクリエイティブはどうあるべきかと考えると、実際に商品を愛用しているタレントさんがリアルな言葉で語りかけるとか、リアルを感じさせるような上質な物語を作り上げることだと思います。フィクションであっても骨太で魅力的なコンテンツを提示することが重要ですね。
三浦:数年前から、時代の気分からずれた発言や、真実に見せかけたフェイクが猛烈に嫌われるようになりましたね。SNSによって裏側がすぐに暴露されるので、上っ面の物言いはバレてしまう。広告キャラクターを務めるタレントさんが本当に商品を好きなのかも意外と伝わってくるし。
見市:SNSには友達や家族といった近しい人間のリアルな言葉があふれているじゃないですか。すると相対的にテレビや広告から流れてくるものはフェイクに見えてしまう。こういう状況でクリエイティブはどうあるべきかと考えると、実際に商品を愛用しているタレントさんがリアルな言葉で語りかけるとか、リアルを感じさせるような上質な物語を作り上げることだと思います。フィクションであっても骨太で魅力的なコンテンツを提示することが重要ですね。
— 広告の作り手は社会に対する嗅覚を常にアップデートすべき
見市:最近はリモートで撮影したものやアニメ化したものなど、情勢の変化に対応したCMが数多くオンエアされています。これから支持を集めるCMってどんなものだと思いますか。
三浦:以前調べたところ、コロナ禍の影響でこの春はTwitterの発信数が前年同月比の1.3倍くらいに増えたんですよ。外出自粛の長期化で可処分時間が長かったことも要因でしょうが、「わかる」という言葉がいつもより多く使われていたそうです。恐らくこの時期はみんながお互いの環境を探りあって共感し合っていたんですよね。
見市:そうですね。友人に「CMの撮影どうしてる?」って聞いてみたりして。
三浦:今回のコロナ禍は3.11のときとは違ってどこに暮らしていようが全員がダメージを受けていて、うかつに動けば自分が感染を拡大する可能性もある。これまで経験したことがない状況の中、どう振る舞えばいいのか分からなくて、誰もが周りの出方をうかがったと思うんです。
ということは、みんなが共感できるものを捉えさえすれば、人々の気持ちをひとつの方向に向けることも可能なのかなと思います。
見市:商品にとどまらず、もっと大きな時代や社会が抱えるインサイトを踏まえたCMを発信したら、広告をきっかけにより多くの人を巻き込むチャンスが生まれるかもしれません。
三浦:例えば『ポカリスエット』のCM※3は制作手法だけでなく、つながるというコンセプト自体が評価されて多方面に影響を与えましたよね。マイナスをプラスに変換するというスタンスもメディアを超えて共鳴された。これからのCMは販促効果に加えて、社会や生活者との向き合い方も含めて評価されるので、僕たち広告の作り手は社会のインサイトを捉える嗅覚をアップデートすることが欠かせないし、それと同時にやりがいのある時代だと考えています。
三浦:以前調べたところ、コロナ禍の影響でこの春はTwitterの発信数が前年同月比の1.3倍くらいに増えたんですよ。外出自粛の長期化で可処分時間が長かったことも要因でしょうが、「わかる」という言葉がいつもより多く使われていたそうです。恐らくこの時期はみんながお互いの環境を探りあって共感し合っていたんですよね。
見市:そうですね。友人に「CMの撮影どうしてる?」って聞いてみたりして。
三浦:今回のコロナ禍は3.11のときとは違ってどこに暮らしていようが全員がダメージを受けていて、うかつに動けば自分が感染を拡大する可能性もある。これまで経験したことがない状況の中、どう振る舞えばいいのか分からなくて、誰もが周りの出方をうかがったと思うんです。
ということは、みんなが共感できるものを捉えさえすれば、人々の気持ちをひとつの方向に向けることも可能なのかなと思います。
見市:商品にとどまらず、もっと大きな時代や社会が抱えるインサイトを踏まえたCMを発信したら、広告をきっかけにより多くの人を巻き込むチャンスが生まれるかもしれません。
三浦:例えば『ポカリスエット』のCM※3は制作手法だけでなく、つながるというコンセプト自体が評価されて多方面に影響を与えましたよね。マイナスをプラスに変換するというスタンスもメディアを超えて共鳴された。これからのCMは販促効果に加えて、社会や生活者との向き合い方も含めて評価されるので、僕たち広告の作り手は社会のインサイトを捉える嗅覚をアップデートすることが欠かせないし、それと同時にやりがいのある時代だと考えています。
※3. 大塚製薬『ポカリスエット』のCM(2020年4月放送開始)。CMキャラクターの汐谷友希と97人の中高生がそれぞれ自室などでCMソングを歌った自撮りの動画をつないで“ポカリNEO合唱”を完成させる姿を映した。
三浦崇宏氏 The Breakthrough Company GO 代表取締役 PR/CreativeDirector
2007年株式会社博報堂入社、マーケティング・PR・クリエイティブの3領域を経験、TBWA\HAKUHODOを経て2017年独立。Cannes Lions、PRアワードグランプリ、ACC賞など受賞多数。近著に『言語化力』(SBクリエイティブ)、『人脈なんてクソだ。』(ダイヤモンド社)。「表現をつくるのではなく、現象を起こすのが仕事」が信条。
見市沖氏 株式会社 電通 クリエーティブディレクター/コピーライター/CMプランナー
2006年電通入社。近作はタイムツリーはじめました、ポッキー、パズドラなど。TCC新人賞、ACC賞、国際PRゴールデンアワードなど受賞多数。「世界に愛されるブランドをひとつでも多く増やす」がモットー。
2007年株式会社博報堂入社、マーケティング・PR・クリエイティブの3領域を経験、TBWA\HAKUHODOを経て2017年独立。Cannes Lions、PRアワードグランプリ、ACC賞など受賞多数。近著に『言語化力』(SBクリエイティブ)、『人脈なんてクソだ。』(ダイヤモンド社)。「表現をつくるのではなく、現象を起こすのが仕事」が信条。
見市沖氏 株式会社 電通 クリエーティブディレクター/コピーライター/CMプランナー
2006年電通入社。近作はタイムツリーはじめました、ポッキー、パズドラなど。TCC新人賞、ACC賞、国際PRゴールデンアワードなど受賞多数。「世界に愛されるブランドをひとつでも多く増やす」がモットー。
その月のCM業界の動きをデータとともに紹介する専門誌です。